SAO編
漁師の性
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釣竿を取り出す。餌をつけた釣糸が沈んでいくのを見ながら、頬を掻いた。
「えっと……街中から繋がってるんで誤解されがちなんだけど、ここって実はフィールドなんだ」
「え、そうなんですか」
「そ。まあつっても、滅多に会わないんだけどな!」
「ちなみにどれくらい……」
「ちょっと厄介なくらい」
「ポートさんでそれなら、私はおとなしく下の階に戻りますわ」
俺が口の端を持ち上げると、だーさんはからからと笑い声をあげる。
「まあ、俺でよければいつでも付きあうぜ!」
「ポートさんと一緒だとなかなか私のほうに魚が寄って来てくれないんですわ」
「本職だからな!……じいちゃんはまだ認めてくんねぇけど」
認めたくはないが、その事実をだーさんに聞こえないようにぽつりと呟いたその時、垂らしていた糸がなにかに引っ張られるようにぴくりぴくりと動き始めた。つられて水面もいくつかの波紋をひとつふたつとつくりだす。俺たちは笑いを引っ込めて、その時を待つ。緊張からか、隣から小さく嚥下する音が聞こえた。瞬間、一際大きな力が加わって竿がしなる。今まで感じたことが無いほどのその大きなしなりに、これは大物だと内心喜びが溢れる。しかし逃がしては元も子もないと、すぐに気を引き締めた。
「くっ……」
まるで地面を引っ張っているんじゃないかと思うほどの重さ。思わず苦悶の声をこぼしてしまった。心配そうな表情を浮かべていただーさんの竿にも別の得物がかかったようで自らの得物に集中し始める。ぐぐぐっと踏ん張るものの、キリトほどの筋力値がない俺は徐々に海の方へと引っ張られていく。遠くで目が覚めたのだろう海鳥が、短く鳴いたのが聞こえた。
「な、めんな……よっ!」
咄嗟に近くにあった樽を蹴り飛ばして、水面に叩きつける。盛大な水しぶきが上がって、驚きからか、わずかに引っ張られる力が緩んだ。俺がその隙を逃がすわけは無い。
「よいっしょぉおおおっ!」
筋力値を全開にして体をしならせて竿を引っ張った。折れるんじゃないかと思うほどに竿が湾曲する。隣でだーさんがサバほどの大きさの魚を釣り上げたらしく、喜びの声をあげた。瞬間。
――ざっぱああああん!
大きな水音と飛沫をあげて、そいつが陸に打ち上げられた。ぴしぴしと打ちあがった滴が頬を打つ感覚さえも気にならず、自分が釣り上げたそれを凝視する。つるりとした頭部は、重みからか後ろに垂れさがり、その左右に見えるのは目にあたるのであろう金色のそれ。その下からは八本の足が全方向に向かって伸びていて、くねくねと動いている。ぬらりと粘着質に光を反射しながら濃紺の海に浮かび上がったのは、見覚えのある形。
「タコ……?」
だーさんが震える声で呟くそれは、真っ青なそいつを
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