暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
27.反撃の狼煙
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「だって、ボク一人でこんな服装なの恥ずかしいしね」

「……いや、そもそも服装ってレベルじゃないけどな」

「……だな」

 蚊帳の外に取り残された古城と彩斗は突っ込みを入れる。

 優麻が白衣の下に着ていたのは、手術用の患者着だった。布を左右で結んだだけの、裸エプロンに近い代物だ。もちろん下着は一切身につけていない。彼女の肌を隠しているのは、全身に巻かれた包帯だけだ。

「病室から抜け出してきたんだ。仕方ないだろ」

 悪びれない口調で優麻が言う。そして彼女は古城を挑発するように、患者着の胸元をチラチラと引っ張って見せた。しかし古城は無反応。代わりに彩斗は耳まで真っ赤にしている。
 もともと吸血衝動抜きで彩斗は普段からこういう耐性が全くというほどない。
 彩斗は必死で目を逸らしている。

「悪いな、煌坂、彩斗。こいつは昔からこういうヤツなんだ」

 紗矢華は恨めしげに古城を睨む。彩斗は今だに目を逸らしている。

「時間もないし、そろそろいいかな。剣を借りるよ、煌坂さん」

 紗矢華を一通りいじり終わったのか、優麻は“煌華麟”に手を伸ばした。そして彼女は、自らの首筋に迷いなく刃を当てる。その行動に、古城たちは息を呑む。

「ユウマ!?」

「──仙都木阿夜は闇誓書を使って、絃神島全域から異能の力を打ち消した。魔族は能力を失って、ただの人間になっているし、生命活動そのものを魔術に頼っている人工生命体(ホムンクルス)や重病患者は、この状況が長く続くと命が危ない」

「だったら……おまえも……」

 首筋から鮮血を流す優麻を見上げて、古城が弱々しく呟いた。魔術治療を受けていた優麻も同様のはずだ。MARと彩斗の力で重症からは救われたが今も危ない状況は変わりない。

「例外があるんだよ、古城。仙都木阿夜は自分の魔力だけは消さなかった。闇誓書を発動しているのは彼女だから、消せなかったというべきか」

 優麻が、ベットの上の古城に覆いかぶさるように倒れこんでくる。彼女の首筋から流れ落ちた血の滴が、古城の口へと落ちる。

「そのおかげで、彼女の複製として造られたボクの魔力も健在だ。今のボクには、仙都木阿夜に対抗できるほどの力はないけど、古城がボクの血を吸えば──」

「吸血鬼の力を取り戻すかもしれない……ってこと!? でも……」

 優麻の目的に気づいて、紗矢華が勢いよく状態を起こす。
 闇誓書は優麻の力を無効にできない。
 だが、すでに古城が完全に異能の力を失った状況では無意味だ。
 しかし優麻は、不安げな紗矢華に微笑する。

「大丈夫。たしかに仙都木阿夜は、自分以外すべての、この世界の異能を消そうとしたのかもしれない。だけど、古城は第四真祖だ。これがどういうことかわかるか
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