アカデミー編
監視
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
ナルトにべったりな状態のくせによく言えると呆れながらも、不貞腐れたカトナの視線に倣うようにナルトを見る。
体術クラスでも特に問題らしい問題は起こしていない。それどころか、着々と友達を増やしているらしい。もちろん”九尾の弟”といって詰られたり、罵られて、関わることを拒む人間は一定数いるし、友達になれない人間も少なくはない。
けれど、どんなに罵倒されても諦めず、必死に食らいついていく姿に、どんどんと人が集まっていっているようだ。
「…よかった」
声を絞り出して、カトナは俯いた。
ナルトに友達ができてよかった、ナルトが人に好かれて良かった。
それは本当に心の底から思い、願った感情なのに、同時に、早く自分が離れなければいけないのに、という焦燥が全身を走る。
ナルトの友達を、自分という人間の所為で離してはいけない。今のうちに、兄弟の縁を切らなければいけない。カトナは、ナルトから離れなければいけない。
そう思うけれど、カトナの体はそれを考えるたびに重くなる。
それは別に、ナルトに望まれたから答えたのでもなんでもなく、カトナ自身がナルトから離れたくないだけで、ナルトに、心の底から依存しているだけで。
「ずるい、ね」
多分、世界で一番卑怯だ。
そう自分を罵りながらも、カトナは横にいるサスケを見る。
「そうだな」
何を指し示すか分からないのに、主語も一切ないのに、ただうなずいて、サスケはナルトを見つめた。
それは全く卑怯ではないのだと言ったとして、お前はずるくないのだと否定しても、結局、カトナに何の影響も出来ないことを知って、サスケは知っている。
カトナにとっての世界が、ナルトで構成されているのは、もうどうやっても変えられないもので。悲しいことに、カトナはナルトを守ることでしか、その世界を守る方法を知らなくて。
家族を知っているサスケは、帰る場所を、お帰りと言ってくれる場所を知っている。
今はもうその場所はないけれど、別の場所がある。
イタチという兄が言ってくれる場所が、カトナ達が言ってくれる場所がある。
対して、カトナは知らない。
「おかえり」と言ってくれる場所を知らない。カトナは「お帰り」と言える場所しか知らない。
ナルトにとっての「両親の代わり」というのが、カトナが自身に課している役目だ。
サスケはよくは知らないが、カトナは自分の父親と母親に誇りを持っていて、二人の最後の言葉を叶えようとしている。
その最後の言葉が一体なんなのかは知らないけれど、それは間違いなく、カトナを縛る鎖になっている。
ナルトに「おかえり」と言うのが自分の役目なのだからと、二人にそう頼まれたのだと、カトナはナルトに「おかえり」を言わせたことはない。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ