動き出す語り部
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倒れるのは、“磨羯宮”シェヴル。
彼女に背を向け銀色の刀を構えたまま停止するクロスは命刀・月夜見ノ尊を別空間へと戻す。
「……ぐふっ!」
それと同時に、クロスは大きく咳き込む。
がくりと膝をつき四つん這いになり、床にポタポタと血が落ちる。
その血は全てクロスの口から咳と共に飛び散ったモノだ。
口元を抑える右手が、血で赤く染まる。
(マズイ…今だけで、5年分の寿命を……失った、か…)
魔力が無くても取り出せる。足りない魔力を所有者の寿命で補う。
それが命刀と呼ばれる由縁だ。
痛みが全身に走り、指一本動かせなくなり、血の気が失せ、限界まで目が見開かれ、冷や汗が滲み、体が震える。呼吸が荒くなり、全身が冷え始め、血と汗が床に落ちる。
(倒れる訳にはいかない…けど、体が……言う事を…聞かな…)
意識が遠のく。視界が狭くなり、暗くなる。
全身の力が抜け、四つん這い状態を保っている事も出来なくなり、そして―――――
「全く…姉の事を大事にするのは悪くないですが、己の事も大事にしてくださいよ」
ぽすり、と。
受け止められる感覚に、クロスは閉じかけていた目を開いた。
冷えた体にじんわりと体温が滲み、その心地よさを痛感しつつ、クロスは顔を上げる。
視界に映ったのは、黒髪。
「ライ…アー……?」
異国めいた服装に、腰まで届く1本に結わえた長い黒髪。
少し長めの前髪から覗くキリッとした黒い瞳は真っ直ぐにクロスを見据え、槍を背負い、どこか呆れたような困ったような微笑みを浮かべている。
「何故、お前がここに…」
「俺は主に7年も仕えてるんです。近かろうが遠かろうが、主の異変にくらい気づきますよ」
クス、と小さく笑いを零す。
自分も傷を負いながらもクロスを支えるライアーは、ふぅ、と短い息を吐いた。
「とりあえず休んでください、主。その状態じゃ、何も出来ませんから」
「にゃろっ!」
小さく声を上げ、スバルは絡みつく蔦を力づくで引き裂いた。
エウリアレーを連射タイプに変形、銃口に淡い赤の光が灯り、炎の弾丸が勢いよく連射される。
対する“巨蟹宮”クラッベは、カラフルな透明菓子の盾で防ぎ、“人馬宮”フレシュは植物を操り、弾丸を弾く。
「焼き菓子の円盤!」
「危ねーなオイ!だったら……これでどうだっ!」
掌サイズのクッキーが、凄まじいスピードで回転しながらスバルに向かう。
身体を仰け反らせ、顔面すれすれを通り抜けたクッキーに対して悪態をつきながら、スバルはエウリアレーを変換させる。
「オラアアアアッ!」
気合の声と共に投げ
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