動き出す語り部
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「何なんだ!?アイツは…」
デバイス・アームズの相手をするマカオとワカバが呟く。
その声が聞こえていたのかいないのか、ジョーカーは僅かに口角を上げた。
オッドアイがウェンディを見つめ、ウェンディはびくっと体を震わせる。
「怖がる事は無い。一撃で終わらせてあげるさ」
右手に、魔力の球体が生まれる。
その威力を身をもって知っているビックスローとエバーグリーンは目を見開いた。
「――――――憤怒」
小さい呟きが、やけに響く。
魔力の球体がジョーカーの手を離れ、真っ直ぐウェンディへと向かう。
「やめてえ――――――――――っ!」
「ウェンディ――――――――っ!」
レビィとシャルルの叫びが、全てを掻き消すように響く。
ジョーカーの顔に、口角を上げただけの、目は全く笑っていない笑みが浮かんだ。
ウェンディの顔が恐怖に染まり、目が見開かれ―――――――
「風神オーディンに命じる。“その名の語源の通り、問答無用で敵を吹き飛ばせ”!」
強い風が、吹いた。
戦う魔導士達の髪を強く揺らし、デバイス・アームズを容赦なく吹き飛ばし、憤怒さえも空の彼方へと消し去る。
周りが呆然と―――――ジョーカーでさえも呆然と目を見開くなか、声が響いた。
「何だ何だ、揃いも揃ってボロボロの布きれみたいになりやがって」
この状況に似つかわしくない、軽い調子のテノール。
白いマントを靡かせる青年が纏うのは、評議院の制服。
本来ならお堅いイメージを与える服装だが、この青年が着ると何故かそうは見えない。
親しみやすいというか、ルーズというか……緩い印象を与える。
「そこの青髪嬢ちゃんも無事みたいだし、これが妖精の尻尾の戦いなら、オレが参戦する理由は特にねーんだけど」
揺れる髪の色は、深海を思わせる深い青。
同じ色の瞳が少し日に焼けた肌に映え、口元には楽しそうな笑み。
―――――――が、実際のところ、今の彼の中に楽しさなんてない。
あるのは、絶対的な怒りだけ。
「こんな馬鹿げた事してんの、お祖母様なんだって?ティアの事散々恥だの何だの言ってるくせに、自分がやってる事が1番恥じゃねーか――――――ま、同じカトレーンとしては恥ずかしいだけだな」
軽い調子の声が、ゆっくりと鋭くなる。
口元の笑みが消え、代わりに怒りが表れる。
青い瞳が、獲物を見つけた猛獣のような鋭さを帯びた。
「さて、こっからは事情聴取だ。黙秘権は無し。嘘言ったら一撃ぶちかます」
ピタリ、と足を止める。
傷ついた雷神衆やシャドウ・ギアより前に。
ジョーカーと真正面から対峙し、青年は告げる。
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