16:極上のマネキン
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「……なんなんだ。どうしてこんな目に……本当に、なんでこうなったんだ、俺は……」
俺は呪詛の如くぶつぶつ呟きながら、未だに痺れる顔面を擦りつつ、ユミルのアイテム一覧を見ていた。
予告通り、すぐに降りてきたユミルの所持アイテムに、別段これといって怪しい物は無かった。
それもそのはずである。少なくとも怪しいと自負しているであろう物は全て二階の自室に隔離されたのだから。
マーブル曰く『男には絶対に見られたくない物』がナンなのか気になるところだが……次にこの話題を出したら、今度は俺の容姿の存続の問題にまでなりかねないので、全力で口を塞ぐ。
アスナ達曰く『ソレ』は、死神事件とは絶対に関係のないモノとは言っていたが、怪しむに越した事はない……。
怪しいといえば、だ。
気にするほどではないが、一つだけユミルの所持品で気になったことがあった。
「そういえば、えらくたくさんの木の実を持ってないか?」
前に少し試食させてくれた、驚天動地の酸味を持つ果実《ココリの実》が詰まった小袋を始め、ナッツや果実などといった、食品を兼ねた素材をユミルは豊富に持っていた。それを除けば、僅かなポーションやランタン等の簡素な生活用具しかない寂れたラインナップだったが故に、この木の実のアイコン達は、ウィンドウの中でも軒並み目立っていた。
「…………ただの、日頃の保存食だよ」
徐々にいつもの不機嫌さを取り戻しつつあるユミルが、やや間を空け素っ気無く答えた。
他人の料理も信用ならないから、自分の調達した食材のみを腹の足しとしているという俺の推理は当たりだったらしい。だが、食事が木の実だけとは流石に侘しすぎるものがある。
「腹は減らないのか? こんなんばっかじゃ、物足りないとか思うだろ?」
「別に、何粒も食べればお腹も膨れるし……そんなことより、次っ。なにすればいいのっ?」
吹っ切れた風に、ふんすと溜息荒くユミルが尋ねる。
「と言っても、あとは……今すぐ出来るのは、あと一つだけだな。……ユミル。いい加減に、そのボロ服を着替えようぜ」
「あっ……うぐっ……わ、分かったよ……」
思い出した風に一瞬目を開いた後、すぐに苦い肝を嘗めたような顔を隠さずに渋々とゆっくりと頷いた。
……そこまでそのボロ切れに固執することは無いだろうに。よっぽど人前で己を華美な服装で着飾るのがイヤなのだろうか。
「……で? 服は? ボクが今からそこの雑貨屋にでも行って、適当に買って着替えてくればいいの?」
「いいや。言ったろ? 費用は俺達が負担してもいい、ってさ。だから――」
俺はニヤリと笑い、横へと手を広げる。
「――こっからは…………こちらの、女性陣の方々のお仕事だ」
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