第百七十二話 戦を振り返りその四
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「あの者達を止めることは出来ぬ」
「まずい、これでは殿が」
「案ずることはないわ!」
だが、だった。ここで。
後ろからそれぞれ声がした、その声の者達はというと。
「わしが徳川家康じゃ!」
「徳川家康の首見事取ってみよ!」
飛騨者達が叫ぶのだった、家康の姿で。
「その腕でな!」
「さあ、出来るか!」
「抜かせ、御主達は家康殿ではないわ!」
その彼等にだ、山県が返した。
「既にわかっておる、戯れ言を言うな!」
「しかし山県殿」
その山県にだ、高坂が傍に来て言ってきた。見れば家康に化けている飛騨者達はただ叫ぶだけでなくその武芸で戦ってもいる。その戦ぶりを見て言うのだ。
「あの者達放ってはおけませぬ」
「ただ家康殿の姿になっているだけではないな」
「はい、ああして戦ってです」
「後詰にもなっておるな」
「かなりの強さです」
だからだというのだ。
「ここはあの者達を止めねば」
「そしてじゃな」
「家康殿を追いましょう」
そして出来るなら捕らえようというのだ。
「さすれば三河まで我等のものとなります」
「そうじゃな、ではな」
「はい、それでは」
「では我等が」
ここでだ、幸村のところから来た十勇士達が二人のところに風の如く駆けてきてそのうえで二人に言ってきた。
「今より向かいます」
「幸村様のご命令ですし」
「頼むぞ」
山県は確かな顔で彼等に言った。
「ここはな」
「はい、お任せあれ」
「それでは」
「御主達に任せた」
飛騨者達はというのだ。
「出来れば家康殿も何とかしたいが」
「それはそれがしが何とか追いまする」
高坂が申し出た、武田家きっての俊英である彼が。
「お任せ下さい」
「そうか、ではな」
「はい、それでは」
こうしてだった、十勇士達が飛騨者達に向かい高坂が軍勢を率いて家康を追うことになった。しかし家康はもう姿を消していた。
そして家康の姿の飛騨者達が暴れ回る、その彼等のところにだった。
十勇士が来た、彼等を代表して海野が言った。
「御主達のことはもうわかっておるわ」
「ほう、我等が徳川家康であるとか」
「わかっておるのか」
「抜かせ、化けておるのがわかっておるということだ」
笑ってだ、海野は彼等に言った。
「全く、ここでまた会うとはな」
「海野殿も元気そうでなりより」
「他のお歴々もな」
「おう、わし等はこの通りだ」
猿飛が楽しげに笑って飛騨者達に応えた、都での一期一会のことを念頭に置いての言葉だ。
「ぴんぴんしておるわ」
「では今よりか」
「力を競い合うとするか」
「手加減はせぬ」
三好清海入道が言ってきた。
「ここで御主達を倒させてもらう」
「面白い、倒せるものならな」
家康の一人が応えた
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