第十七話 最後の少女その五
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「そう老師にも教えてもらったんだよ」
「横須賀にいた時に」
「ああ、それでなんだよ」
だからだというのだ。
「あたしもそんなことはしないよ」
「いいことね、本当に」
「それにあたしは拳法は好きだけれどな」
「暴力は嫌いなのね」
「自分より腕力が弱いだけの相手いじめて何が楽しいんだよ」
そうしたことは、とだ。薊は軽蔑の感情さえ込めて言った。
「そんなの何がいいんだか」
「そうよね、私も今ではそう思うわ」
「そんな奴は強くとも何ともないんだよ」
薊は裕香にも言った。
「全然な」
「そうよね、本当に」
「そういう輩はね」
ここでだ、また言った鈴蘭だった。
「私は容赦しないわ」
「それはあたしもだよ」
「正義とは言わないけれど」
こうしたことは、というのだ。
「それでもね」
「叩きのめすよな、そんな奴は」
「再起不能になるまでね」
そこまで、というのだ。
「遭えばね」
「それが正しいよ、あたしも同じだよ」
薊も彼女の倫理観に基づいてそうする、そうした輩に一切の考慮するところを見出すことが出来ないからである。
「何かそこは一致してるな」
「そうね、考え方は」
「ああ、けれどなんだな」
「共闘はしないわ」
このことはだ、鈴蘭ははっきりと言った。
「悪いけれどね」
「そうなんだな、けれどな」
「また誘いをかけるのね」
「機会をあらためてな」
実際に、と言う薊だった。
「そうするな」
「そう、けれど何度声をかけてくれても」
「そうだろうな、けれどあたしもな」
「諦めないのね」
「友達は多い方がいいしな」
それにとだ、薊は少年めいた明るい笑顔で答えた。
「それにあんた達面白そうだよ」
「私達が面白い」
「人間としてな」
そうだというのだ。
「だからな、友達になりたいんだよ」
「友達ね、私達にとっては」
「あんた達にとっては?」
「あまり意味がないものね」
「やっぱり二人の方がかよ」
「そう、二人で充分だから」
双子星のままにだ、姉妹でいればそれでというのだ。
「だからよ」
「二人きりで寂しくねえか?」
「別に。一人なら寂しいけれど」
それでもだというのだ。
「二人ならね」
「そうか、じゃあまたな」
「何度でもだけれどね」
「その何度でもだよ」
薊は笑って答えた。
「そういうことでな」
「そう、とにかくね」
鈴蘭は薊のそのアタックは闘牛士の様にかわしてだ、そのうえでこう自分から述べた。
「貴女のことはわかったわ」
「どんな奴っていうんだい?」
「面白い娘ね」
微笑んでだ、薊はそうした娘だと答えた。
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