トワノクウ
第十二夜 ゆきはつ三叉路(三)
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ら」
我ながら心にもないことを言っている。しかし殊勝にしているほうが心証はいいはずだ。そう信じる。
「片付きましたか、潤朱」
上から降ってきた声に、くうの全身が硬直した。
「銀朱様」
潤が前に出る。
勇気を出してふり返る。潤が礼をとるのを、社の中から銀朱が見下ろしていた。
「ご覧になっていたのですか?」
「ええ。残念ながら私の出番は全て貴方とそこの娘に奪われてしまいましたので、高みの見物と洒落込んでいました」
銀朱は潤と同じく礼をとっていた巫女たちに、怪我人の手当てを命じた。戦巫女たちが負傷した者を抱えたりしてぱらぱらと散っていく。
「さて。貴方の活躍のほどは見ていました」
銀朱がくうに目を向けた。怖かったが、活躍を見ていたと言われて希望が灯った。
そうとも、くうは銀朱が敵視している「妖」を退けたのだ。これでくうの待遇も少しはよく――
「潤朱。彼女を奥に戻しなさい」
顔面が笑顔を維持したまま硬直したのが分かった。
今、自分は坂守神社の人間を、銀朱の身内を救ったはずだ。それなのにこの仕打ちなのか。妖という要素は銀朱にとって恩も義理も感じさせないほどに邪悪なものなのか。
動揺をあらわにしたのは、くうではなく潤だった。
「銀朱様っ、ですが彼女はたった今」
「お前の主人の命令が聞けないのですか」
銀朱が場違いにあでやかに微笑んだ。逆に潤はびくりと跳ね上がる。
潤は情けを誘う弱々しさを一瞬だけくうに向けてから、銀朱に礼をとった。
「――銀朱様の仰せのままに」
目の前が真っ暗になった。
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