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トワノクウ
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第十二夜 ゆきはつ三叉路(一)
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くる話だ。

「この世界じゃ呪い≠ヘかけた奴に解かせるしかない。殺して解けるなら簡単だが、ここはRPGみたいに上手くできてない。――と、脱線したな。とにかく、だから銀朱様は天狗に拘ってる。篠ノ女はその天狗と接触してしまったんだ」
「銀朱さんがやつあたりして私に危害を加える可能性が高いと、そういうわけですね」

 潤の沈黙は肯定を示していた。仕える主人をそういうふうに語った後味の悪さと、銀朱に不興を買うかもしれないとの畏れも、見え隠れしている。

「――天座も迷惑なことしてくれたよな」

 潤が話題を変えた。付き合ってあげることにした。

「私にも、潤君達にも、ね」
「まったくだ」

 沈黙が二人の間に流れる。
 ――潤がいるのに、空気を気詰まりに感じる日が来るなんて夢にも思わなかった。

 楽研の練習前のほんのひとときを、部室で潤と二人きりで過ごすのがくうの日課だった(薫ふくむ部員らが結託して時間を提供してくれたからだ)。そのひとときが、たとえば読書やゲーム、楽器の調整などに費やされても、静寂の中に互いの息吹を感じられた。

 それが今やどうだ。このように苦しい時間は他に知らない。

「――」
「――」
「――っ」
「帰る」
「え!?」

 潤はくうに背を向ける。「聴取の仕方については俺も尽力する。非人道的にならないようにな。ただ、俺にも立場があるから、あまり期待しないでくれ」

 潤は襖を開けた。その所作に警戒は見られない。くうが潤を振り切って外に飛び出すとは考えてもいないらしい。

「――俺だけはあの人を裏切れないんだ」

 襖が閉まり、潤の姿はその向こうへ消えた。

 くうは溜息をついた。

(銀朱さんのためなら私のことは裏切ってもいいって言うのね)

 そういう意味での溜息だった。

 無理もない、と言いたくはない。潤がくうと共に彼岸で過ごしたのは高校入学から春休みまでの一年間。銀朱と過ごしたのはずれた時間での二年間。倍だ。だからといって自分と潤のつながりが銀朱より薄いと意地でも思いたくないのは、ひとえに恋する乙女の心理なのだが、くうはそれさえ認めたくない。あのような、無神経で友情を裏切るような男子をスキだったなどとは思い出したくもない。

(だめだ。潤君に関しては論理的な思考ができません。これは一度思考をカットして別のことを考えるようにしましょう)

 中原潤の項目をできるだけ隅に追いやって別の懸案事項を検索する。出てきたのは、やはり、これから自分がどうなるかの心配だった。

(いきなりそんな切実な問題がヒットしなくてもいいじゃないですか私の脳! まあ潤君よりはましなんで考えますけど!)

 純白の翼。くうに見覚えのないそれのせいで、くうは妖祓いたち
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