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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
26.闇の侵蝕者たち
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は攻撃を放っていた。前触れもなく空中に出現したヴァトラーの眷獣が毒々しい緑色の閃光を吐き、その直撃を受けた男が巨大な爆発に包まれる。
「ア、アルデアル公……!?」
崩れ落ちる埠頭を眺めて、友妃が絶句した。ヴァトラーの手加減抜きの一撃を受けて耐えられる者がいるとは思えない。
「これで死ぬ程度の相手なら、必要ないよ。わざわざボクが相手するまでもない」
「──そのコトバ、そっくりそのままキサマにカエすぞ、ディミトリエ・ヴァトラー」
次の瞬間、立ちこめる爆炎を切り裂いて、銀色の光が放たれた。
大地を蹴って舞い上がった甲冑の男が、背中から引き抜いた巨剣をヴァトラーの眷獣へと叩きつける。全長数十メートルに達する濃緑色の大蛇が閃光を撒き散らしながら爆散した。そして眷獣を失った無防御のヴァトラーへと、甲冑の男が斬りかかる。
「ぐっ!?」
横殴りの壮絶な斬撃を喰らって、ヴァトラーが吹き飛んだ。彼はそのままオシアナス・グレイヴUに激突した。
「アルデアル公」
「眷獣を……斬った!? 嘘……!?」
「これが……監獄結界の脱獄囚!?」
三人が言葉を失う。
だが、突如現れた少年は当たり前のように納得している。
負傷したヴァトラーを追って、甲冑の男がオシアナス・グレイヴUの甲板に飛び移る。
それを追うとするが一人の男の声で足が止まる。
「おお……派手にやってんなー。ちぃっと出遅れちまったぜ、畜生」
場違いなほど明けっ広げな笑顔で、新たな人影が雪菜たちの前に立ちはだかった。
ドレッドヘアの小柄な男だ。
「あなたは……!?」
雪菜は立ち止まって、槍を構えた。その男は、シュトラ・Dと呼ばれていた監獄結界の脱獄囚だ。
戦闘態勢に入る雪菜と友妃に愉しげに見返してくる。
「なんだァ……“魔族特区”じゃ攻魔師がナースもやってんのか?」
「「え?」」
「まあいいや。でめェらには俺のプライドを傷つけてもらった借りがあったなァ、ナースの姉ちゃんたちよォ──!」
自分たちはナースではない、と言い訳する余裕もなくシュトラ・Dの右手が高々と頭上に掲げ、それを一気に振り下ろす。
あの不可視の斬撃は、“雪霞狼”でも、“夢幻龍”でも、完全には止められなかった。
カンだけを頼りに刀を掲げた。敵の攻撃範囲がわからない以上、回避は不可能。
しかしシュトラ・Dの攻撃が襲って来る前に、その攻撃は消滅した。
それは相手と同じく不可視の壁に拒まれたようだった。
それは紗矢華が持つ“煌華麟”の能力の一つだ。物理攻撃の無効化。空間とのつながりを断つことで一瞬だけ、絶対防御の障壁を生む。
だが、隣の紗矢華を見るも“煌華麟”を持っているもその刀身は下を向いていた
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