暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
26.闇の侵蝕者たち
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てこれ以上悪化しないとはいえ、回復も那月か仙都木阿夜のどちらかの力を使わなければ治すことはできない。
 仙都木阿夜が協力などするわけがない。それなら那月を元に戻すしか優麻を救う方法はない。そのためには、仙都木阿夜の魔導書で元に戻すしかない。
 つまりは、仙都木阿夜を止めるしか方法はないのだ。

『彩斗君?』

 携帯からこちらを心配する友妃の声が響く。

「あ、ああ。悪ぃ、大丈夫だ」

 ここで彩斗が弱気になってはダメだ。
 今は、考えることは那月と優麻を助けるということだ。そのために彩斗はあの暗闇から抜け出したのだから。顔もわからない少女とも約束をしたのだ。
 その約束を守らねばならない。

 そのときだった。彩斗の中に眠る化け物たちがなにかに反応して殺気立つ。

「……ッ!」

 彩斗は勢い良く振り返った。
 “オシアナス・グレイヴU”の広い甲板の上。そこには彩斗しかいなかったはずだ。
 漆黒の空の一部が陽炎のように揺らめく。一部のその空間だけが切り取られたように揺らめき続ける。
 揺らめく闇は徐々にその形を形成していく。
 その姿に彩斗は驚愕する。
 闇と同化するほどの漆黒のローブ。それは顔まで覆い尽くし、性別すら判断することができない。

「なんで、テメェがここにいやがる!」

 彩斗は牽制するように魔力を放出する。

『どうしたの? 彩斗君!?』

 携帯越しから友妃の声がするが今は答えてる余裕などない。
 こいつは監獄結界の脱獄囚だ。しかもその中で彩斗が一番不快さを感じた奴だ。

 ローブはなにも口にしない。動くことすらない。
 こいつからは殺意もなにも感じられない。那月を殺しにきたわけではないのか。
 思考を巡らせる。
 だが、答えなど一切として出ることなどあるわけもない。とりあえず、こいつをここから引き離すのが先決だろう。
 身体から激流のように魔力が放出される。右腕から鮮血が噴き出す。

「──来い、“海王の聖馬(ポセイドン・ユニコール)”!」

 黄金の角を持つ一角獣(ユニコーン)が顕現する。
 ここで眷獣を使った攻撃をすれば船内にいる浅葱たちにも被害が及ぶ。
 一角獣(ユニコーン)は彩斗の身体目掛けて突進し、激突と同時に爆発的な魔力を生じる。
 魔力は凝縮され、彩斗の身体を包み込む。
 そしてローブ同様に闇に同化するほどの漆黒の膝丈まであるロングコートへと変化する。

 “海王の聖馬(ポセイドン・ユニコール)”は武器化することで身体能力を爆発的に上昇させる。
 彩斗は甲板を強く蹴り、ローブとの距離を一気に詰める。
 吸血鬼の筋力と“海王の聖馬(ポセイドン・ユニコール)”の能力を纏った突進の威力を加えた掌底をローブめがけて叩き
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