SAO編
旨い飯は元気の源
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らく細剣術の基本技である《リニア―》だろう。鍛え上げられた敏捷度パラメーターに後押しされたそれは、決して侮れないスピードだ。
「ポート君?」
「こればっかりはまじですみません」
「何の話だよ」
「なんでもない!」
俺たちの様子に疑問の声をあげるキリトに、わずかに顔を赤くしたアスナが詰め寄る。一難去った俺は、ふう、と息をついて茶を啜った。ううん、何度飲んでも不思議な味だ。
「うっ……」
ぼーっと机上にきれいに飾られた花を見ていると、視界の端でまた銀色の光が瞬いたのが見えた。同時に聞こえたキリトの驚いた声と、指の上でくるくるとナイフを回すアスナにいろいろと察する。面倒に巻き込まれてはたまらんと、傍観を決め込んだ。
「なら、しばらくわたしとコンビ組みなさい。ボス攻略パーティーの編成責任者として、君が噂ほど強いヒトなのか確かめたいと思っていたとこだし。わたしの実力もちゃんと教えて差し上げたいし。あと今週のラッキーカラー黒だし」
「な、なんだそりゃ!」
あまりの理不尽さにキリトが大袈裟に仰け反った。恋する乙女って怖い。何がってエネルギーが。思わず苦笑しながらふたりの会話の行く末を見守っていると、見事にアスナに丸め込まれたキリトがこくこくと頷いた。
「わ、解った。じゃあ……明日朝九時、七十四層のゲートで待ってる」
わずか二分に満たないキリトの抵抗は、アスナの強気な笑みに屈することになった。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るな」
椅子から立ち上がって、二人に軽く手を振った。キリトがはっと俺を思い出したように見る。忘れてやがったな、この野郎。
「ぽ、ポートもどうだ?明日!」
「馬に蹴られる趣味はねーよ」
「わたしとしてはあなたの実力も見ておきたいとこではあるけど」
「悪いな。明日は先約があんだ」
「そ。ならいいけど」
「おう。夕飯、ご馳走さま」
「お粗末様でした」
アスナの部屋を出て、階段を下りる。こつりこつりとなる硬質な音は、冷たい感触ばかりを俺の中に残していく。胸に響くそれを意識の端にとめながら、帰りたいと言った彼女のまっすぐな瞳を思い出した。
「強さ、か……」
ぽつりとした呟きは、誰の耳にも入ることなく夜闇に染まった街に溶けていく。ふと、転移門広場から歩いてくる二人の青年に目がいった。友達なのだろう二人は、親しげにふざけ合いながら歩いている。どん、とふざけ半分で右側に立っていた青年が左の青年にかるく体をぶつけると、よろめいた彼が俺の肩にぶつかった。ふ、とこげ茶色の瞳と目が合う。どこか幼さの残るその顔に、いつかの景色が重なった。
「あ、すみません」
「あ、ああ……こっちこそ」
軽く会釈をした青年は面白
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