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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第二節 木馬 第五話 (通算第30話)
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ある。これで、片道切符は取り付けた。しかし、その先にはルナツー鎮守府が置かれている宇宙要塞がある。
「ですがルナツーは」
「かなりティターンズ寄りだが、いきなり発砲ということはあるまい」
 シャアの言葉をブレックスが遮る。
 ヘンケンが、戦略地図を点けて、カーソルを動かした。
「潜入する時点でのグリプスの予想位置はハロ軌道上、最もルナツーと離れる位置にある」
「とすると、レーダー監視網の間隙を抜けられる可能性もある……と?」
「そういうことだ。逆にミノフスキー粒子を撒布すれば怪しまれるおそれがある」
 シャアが思った以上に作戦は練られていた。
 だが、これには陽動というかブラフが必要ではないのか。ジャミトフ・ハイマンという野心家は策謀を以て敵を陥れるタイプであるが、バスク・オムは過激派である。敵は慢心させておくにしくはない。
「この件は、准将の発案であるのでしょうか?」
 ブレックスとヘンケンが顔を見合わせる。
 この作戦は確かにブレックスやヘンケンの立案ではなかったからだ。
 エゥーゴは、月面恒久都市の防衛を任務とする以上、積極的な攻勢作戦の立案には無縁であり、作戦本部などはなく、基地司令と防衛分艦隊司令官および戦隊司令官たちによる作戦会議によって行われることになっている。そして、この作戦はエゥーゴの総意ではなかった。
「スポンサーからのゴリ押しですか。カーバイン会長は随分と戦争がなさりたいらしい」
「いや、そうではない」
 ブレックスがシャアの洞察を肯定しつつ、笑った。
「准将もオレも、これがいい契機になると踏んだんだ」
「それは、これ以上ティターンズの戦力が増強される前にエゥーゴがティターンズに対して対抗力を持っていることを示したい……そう考えてよろしいのでしょうか?」
 ヘンケンは相好を崩した。
「クワトロ大尉、パイロットなんぞ辞めて、オレの参謀にならないか?」
「ヘンケン大佐……私は宇宙の戦士であることに誇りを持っています。参謀は他の御仁にお任せしますよ」
 キッパリと断られてもヘンケンは嬉しそうだった。
 シャアの先見の明は戦場において戦局を見渡せるということにほかならない。そしてそれは、味方を勝利に導いてくれると思えるのだ。
「准将、私に一つ提案があるのですが……」
 サングラスの奥でシャアの双眸に光が灯った。
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