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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第二節 木馬 第四話 (通算第29話)
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スーツの数倍も搭載しているのだから当然である。
「木馬と同じだ……」
 シャアが思わず呟く。事実《アーガマ》と《ホワイトベース》は基本設計が同じであった。異なるのは中央カタパルトをモビルスーツデッキとし、両舷にカタパルトが装備されている点である。エンジンブロックや艦橋などの独立工法によって工期が短縮されており、居住ブロックがむき出しであることも特徴だった。
「サラブレッド級攻撃機動母艦《アーガマ》と制式登録はされているが、アイリッシュ級宇宙戦艦の零番艦と言う方が正しいな」
「アイリッシュ級……ですか?」
 シャアには聞いたことの無いクラスだった。連邦の新型艦ということなのだろうか。共和国経由の情報にもなかった名称である。
「あぁ、大尉にはまだ話していなかったな。アイリッシュ級というのは、現在建造中の戦艦だよ。それも、巡洋艦として申請をしている……ね」
 この《アーガマ》とて木星船団の大型長距離航行船の建造費を流用しているのだ。その上、巡洋艦と偽って戦艦を発注しているとなると……
「バレれば、私は軍法会議ものだな?」
「准将……」
 シャアはブレックスの態度に余裕を感じていた。ブレックスの見立てでは、サイド自治政府の管理下にあるサイド駐留軍の協力体制がかなり整っているということだろう。問題は……
「あとは議会ですか」
「いや、サイド自治政府もなかなか首は立てに振らんさ。だがね、クワトロ大尉、誰かがやらなければならないのだ。地球の暴力に宇宙市民が屈せねばならないという法はない」
 父ジオンもそうであったように――シャアは心の中でそう付け加えた。
 今はただ、クワトロ・バジーナとして、この争いに巻き込まれていくべきだと考えた。現時点で、エゥーゴが固有の武力として保有しているのは建造中の一個戦隊とシャアが動かすことができるジオン共和国の一個戦隊、ブレックスの指揮下にある機動歩兵一個大隊が全てである。ジオン共和国の一個戦隊が参列すれば、サイド自治政府の支援を受けられる様になるであろうことは予測できた。
「これ以上、ティターンズの連中に好き勝手させる訳にはいきません」
「頼もしいな。エゥーゴとして初めての作戦で、大尉の活躍を期待させてもらおう」
「はっ。微力を尽くします!」
 ブレックスはシャアを伴って《アーガマ》の艦橋へと上がった。
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