第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第二節 木馬 第三話 (通算第28話)
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く笑うと、そうあらねばらなんと不敵な笑みを見せた。ブレックスはシャアの軽口を好意的に受け止めた。シャア自身、そんなことを自分が言ってみせたということに、ブレックスに馴染んでいる自分をみたのだ。
「大尉にはこの機体に搭乗してもらいたいが」
「私に……でありますか」
シャアはエゥーゴに派遣されているジオン共和国軍人である。エゥーゴはいずれ、地球連邦軍から分離し、独自組織として月面恒久都市同盟の防衛軍となっていくであろうが、そこに自分がいる姿をシャアは想像できなかった。
「我々エゥーゴ初のモビルスーツ《リックディアス》のベース機である《ドワーズ》は、ジオン共和国軍で制式採用が決まっている。外見こそ違うが、中身は同じだ。大尉も何れ乗るのだから、エゥーゴにいる間は、この機体を使ってほしい」
ブレックスが示した機体はシャアが気にした機体ではなかったが、その発言の内容自体はシャアにとって重要だった。政府が裏で動いているのは判っていたが、ブレックスがシャアよりも先に情報を握っていることが、暗にシャアにエゥーゴへの協力を自由にしてよいといっていたからだ。
今まで政府の手前もあり、シャアはあくまでジオン共和国軍人として――クワトロ・バジーナ大尉としての範囲でブレックスに協力してきた。しかし、今後はシャアの権限で動いても良いということであると断じた。
「受領はいつに?」
「大尉にはこのまま《アーガマ》でグラナダに戻ってもらい、作戦に参加してもらいたい」
「はっ!では、グラナダまでの間に、慣らしを済ませておきます」
シャアの言葉は、ブレックスが期待していた通りだった。
元々、シャアはクワトロ・バジーナとして革命をやりたかったのかもしれないと自嘲した。だが、彼は戦場に固執した。それが今ひとつ自分でも判らないこだわりではあった。
「あれはどうなさるので?」
先ほどから気にしていた《ドワーズ》である。
「あぁ、あれかね。擬装用のパーツが間に合わなかったとかで、こちらでは引き取れなくなった機体だ。どうだね、大尉。乗ってみるか?」
「いえ、後ほど受領する方の機体に搭乗させていただきましょう」
ブレックスに敬礼し、満足げに頷くのをみて、背後に流れる。シャアは少しだけ自分が高揚しているのを感じていた。
《ドワーズ》のベースになったのは《ドワス》である。最終決戦が行われた〈ア・バオア・クー〉でシャアが搭乗する筈だったのは《ドワス》の改良型であるニュータイプ専用重モビルスーツ《ドワン》だった。しかし、《ドワス》の開発が遅れたために《ドワン》は最終決戦に間に合わなかった。その機体はアクシズに運ばれ、アステロイドベルト宙域で本来の乗り主に巡り会った。
その感覚からすると、ジオン共和国軍に戻ってから授与された《ガルバルディ》は物足りない機体であった。《
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