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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第二節 木馬 第一話 (通算第26話)
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 シャアはくすりとレコアが笑った気がした。しかし、視線をレコアに流すと、レコアは真剣な表情でシャアをみていた。不意にそれが、笑みに変わる。
「お疲れさまでした。次のフライトはもうちょっと長くご一緒できると嬉しいんですけど」
 シャアにはそれが、永遠に来ない機会であるように感じられてならなかった。何故と言われても答えられない予感のようなものだろうか。
 接舷すると、出入り口に立つフライトアテンダントが飛び切りの笑顔でシャアとレコアを送り出した。アナハイムの教育は行き届いているとみえ、シャアとレコアの扱いは丁重だった。
 シャアとレコアがシャトルのドッキングポートからでると、そこにはロマンスグレーの髪に美髯が特徴的な、精悍でいて柔和な面立ちの将官が迎え出ている。ブレックス・フォーラだ。
「大尉、久しぶりだね」
 不敵な笑みが彼の自信の現れと言ってもいいだろう。シャアにみせることが彼の目的の一つでもあったのだ。
「フォーラ准将自らお出迎えとは……恐れ入ります」
 恐縮していなくてもさらりといってのける。この辺りが、レコアの言うバレる物言いというものだろう。しかし、シャアは全く気づいていなかった。
「外に繋留されていた艦ですか……?」
「さすが大尉だ。気づいたか?我々が独自にアナハイムに発注した機動母艦でね、随分予算の都合には苦労した」
 機密事項であろうことも気軽に口にする。相手を信用していると見せるためのジェスチャーともいえるが、これはブレックス・フォーラのシャアに対する信頼がなせるものであるとも言えた。
「木馬の様にもみえましたが……」
「木馬……?あぁ、ペガサス級に似ているだろう。サラブレッド級の後継型になる。我々はペガサスUと呼んでいたんだが、スポンサーに蹴られてしまってね」
 肩を竦めてシャアを眺める。
 木馬という言葉に一瞬視線が鋭くなったことを気づかれなかったかどうかを窺っているのだが、シャアの視線はサングラス越しに宇宙へと注がれていた。視線の先には窓から見える白い機動母艦があった。
「メラニー・ヒュー・カーバインですか」
「あぁ。アーガマという名前になった」
「アーガマ?」
「オリエントの言葉で、始めと終わり……とかいう意味だそうだ。メラニーの趣味だよ」
 ブレックスは、シャアと宇宙との間に流れながら、話をつづける。
「あの艦は、グラナダに配属されることになっている」
「グラナダというと、我々ジオン共和国軍が駐留していますが……?」
「このご時世にジオンだ、連邦だと言う連中は地球のエリートどもだけさ。大体、宇宙じゃジオンのシンパの方が多いというじゃないか」
 リフト・グリップを掴んで、ブレックスが通路を奥に進む。行き先を告げない彼の行動に若干戸惑いながらも、シャアはモビルスーツデッキであろうと感じて
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