第四章
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もしっかりしてる」
「これは昆布に鰹節に」
おゆかが何でだしを取っているのか、そばについていた僅かのつゆから分析してみせた。
「それにこの醤油は」
「醤油が違うな」
文太はそれを言った。
「薄いな、これは」
「これが大阪の醤油なのかね」
「多分そうだな」
そこまで舌で見抜いた。流石に見事な舌だ。
「それでこの味か」
「江戸のものよりも色々使ってるね」
「そうだな」
細かいところまでわかる。かけに関してはそこまでわかった。
「それでざるは」
「見たところ醤油だな」
江戸と同じように見えるものだった。
「けれど大根は入れていないな」
「そうだね」
「それで美味くなるのか?」
そのそばつゆを見ながら怪訝な顔をしている。
「どうなんだ、これで」
「けれど食べてみようよ」
今度はおゆかが文太に勧めた。
「そうじゃないとわからないしね」
「そうだな、かけと同じでな」
「そういうことだよ」
こう言い合ってざるも口に入れた。するとすぐにまたかけを食べた時と同じ顔になるのだった。
「醤油だけじゃないな」
「そうだね」
一見しただけではわからない。しかし食べてみてわかるのだった。
「やっぱり昆布に鰹だね」
「そうだな」
「そうだ。それでやっぱり醤油も違う」
「醤油だけじゃなかったんだね」
二人はこれに気付かなかったのだ。完全に江戸のつもりだった。だから全く気付かなかった。だがそのことに今気付いたのだった。
「醤油はこれは」
「ああ、これやね」
ふと側を通った店の娘が二人に顔を向けて声をかけてきた。
「あんた等江戸の人やね」
「わかるのか」
「わかるで、言葉遣いそのまんまやん」
朗らかな笑顔を二人に向けながら話す。その笑顔がまた実に人懐っこい。
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