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大阪の蕎麦
第二章
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蕎麦を用意する。早速そのせいろを三つ出す。当然つゆもだ。これを忘れてはどうにもならない。
 河内達はそのせいろをまず見る。その顔は喜んでいる顔ではなかった。文太もそれに気付いた。それですぐに河内達に対して問うた。
「何か?」
「うむ、せいろだな」
「ええ、そうですが」
「実によくできている」
 まずはそれを認めてきた。
「蕎麦粉や水だけではない。打ち方も考えているな」
「当然でさあ」
 文太は胸を張って言ってみせた。
「打ち方がまず大事。ですから」
「麺の切り方もいい」
 彼が次に見たのはそれだった。
「よく切れている。蒸し方もな」
「悪いところは無い筈ですよ」
「しかし。これでは売れぬ」
「えっ!?」
「またどうして」
 文太だけでなくおゆかも今の河内の言葉には思わず声をあげた。
「この蕎麦が売れないとは」
「どうしてまたそんな」
「一つ言っておこう」
 河内はその二人に静かに告げてきた。
「ここは大阪だ」
「ええ、それは」
「わかってますけれど」
「それを考えるのだ。そうでなくてはここでは売れぬ」
 それを言うのだった。
「よくな」
「大阪では売れない」
「江戸ではあんなに売れていたのに」
「では聞こう」
 訳のわからない顔になった戸惑い続ける二人に対してまた言ってみせてきた。

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