暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第十話〜闇の帳〜
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増え、先程から誰とも知らない感情や思念が流れ込み始めているが。
 走るような痛みを我慢するために臍をかみながら、ライは爆発によって生まれた煙の先に視線を向けた。
 煙が晴れる。
 暗澹たる色の空を背景に浮かぶのは、蛇に覆われた一冊の本とその担い手たる管制人格。その姿を見ると、何故かギアスに飲まれていた王の時代を思い出しライの胸中に少しだけ闇を落とし、眉を潜めた。
 煙が晴れたことで向こうもこちらを視認したのか、管制人格の彼女もライの存在に気付く。正確には、自分の攻撃を迎撃したのがライであることに気付き、その顔に驚きの表情を溢す。

「あ、貴方は?」

 ライの背後から呆然とした声が聞こえる。視線を向けることなく、ライは声の主であるクロノに向けて声を発した。

「退避を。後ろの四人を連れてここから離れて」

「待っ…………四人?」

 静止の言葉を吐き出しきる前に、ライの言葉に違和感を持ったクロノは振り返る。するとそこには、屋上の出入り口付近に気絶したなのは、フェイト、アルフの手当てをしているリンディ・ハラオウンの姿があった。

「なんで……」

「グズグズする前に行動を起こせ。彼女たちは君が守るべき対象だろう」

 クロノの疑問は自然と口から溢れるが、それがどの疑問に対してかはライも分からなかった。ここで疑問に答えてやれば、スムーズに事は運ぶのだろうがそんな暇はないとライは断じ発破をかける。

(リンディさん、後は頼みます)

 視線を向けることなく、念話で語りかけるライ。確認したわけではないが、なんとなく彼女が頷きを返している姿を脳裏で幻視した。
 クロノがリンディたちの元に移動し始めると同時に、ライは一歩を踏み出す。
 その一歩は決意であり、ライにとっての覚悟でもあった。

「決着を着けよう。夜天の書が生み出す闇の歴史に」

 その言葉は陳腐であった。
 これまでの歴代の夜天の書の主と同じく、根拠のない確信と自身に満ちている言葉。
 だが、それは諦める理由にはならない。なりえない。

「結末がなんであれ、確定した未来などない。そんな未来があるのであれば、人は今を生きなくなる。生きる意味がなくなる」

 不確定であるが故に望んだ明日。そこには不安も恐怖も当然のように存在する。
 しかし、そこから逃げることをライは選ばない。

「ならば、精一杯今を生きるために、存在しうる最良の結果を僕はたぐり寄せる」

 そして新たな闇が生み出されるか、若しくはその闇を振り払う為の舞台の幕は上がる。






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