2ndA‘s編
第十話〜闇の帳〜
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状況について行けていないはやては、混乱するばかりであったがそれも彼女にとっての家族の姿を見るまでであった。その場を見ていたクロノはその時点で、彼女が夜天の書の主であることを察する。
結果だけ言えば、ヴォルケンリッターは蒐集され夜天の書は完成される。そしてその蒐集を目の前で見せられたはやては、絶望するように慟哭をあげる。それと共に溢れ出す彼女生来の魔力。それが暴風となり、世界も彼女も一変した。
元々貼られていた結界は拡張され、彼女の肉体は管制融合騎のものと同じ姿に変化する。
その非常識な魔力量と術式に、クロノは驚愕を隠せなかった。
彼の動揺が収まる前に、現れた管制融合騎はこの辺り一帯を押し流すように空間魔法を放つ。その攻撃から守るべき市民を守るために彼は魔力を全て使い込み、三人を守りきる。
そして、彼は彼女に対し、先ほどの投稿勧告を出したのであった。
「お前にも望む夢があるだろう。その夢を見せてやる」
感情を感じさせない声に背筋が寒くなる。しかし、自分の背後に守るべき三人がいることを意識して、自分の足に喝を入れた。
「夢は人が生きる目的であり願いだ。だけどそれは、自分自身で叶えるからこそ、叶える苦しみや困難を知るからこそ意味がある。一方的に与えられるだけの願いになんの意味がある!」
潔く啖呵を切ったが、それで自体が好転することはない。その証拠にクロノの足は身体をかろうじて支えているだけで、今もバリアジャケットの内側で震えている。
見た目通り満身創痍な彼にとって、しかしその言葉はどうしても口にしなければならないと、理屈ではなく感情が訴えてきた。
「……そうか」
ほんの少しだけ、本当に少しだけ悲しみの感情を滲ませた声が漏れる。生憎と今のクロノにそれを感じ取る余裕がなかったが。
どこかゆったりとした風に見える動作で、彼女は手のひらをクロノに向けてきた。
「穿て、ブラッディダガー」
静かに呟かれた言葉。それと共に名称通り、血のような色の苦無のような刃物が数十本出現し、一直線にクロノに向かって行く。
「クッ――ソ!!」
一瞬回避という選択肢が思い浮かぶが、下手に避けてしまうと後ろにいる三人に被害が及ぶと気付くと、次の行動は早かった。
先の空間攻撃魔法を防ぎ、ほぼ保有魔力の全てを消費したために、このままでは自分も含めこの場にいる人間は全員吹き飛ばされるだろう。
「なら!」
自分の内に無いのであれば、内以外から持ってこればいい。
一声吐き出すと同時にクロノはバリアジャケットを解除、そしてそれによって解けた魔力を再構成、捻り出すように魔力障壁を展開した。
(保ってくれ!)
内心で願いとも気合とも取れる言葉を呟きながら、彼は目前に迫る血染めの刃
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