第十八話 モヤッと。
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。紅緒のクラスは秋の京都に行く、という事が春の時点で決まっていたらしい。
「一生に一度の修学旅行だからなぁ」
「まだ夏もあるし、仕方ないない」
哲也と譲二は、こんな感じで最初から諦めており、地元民の秋の大会に対する意識がよく表れていた。主将の紗理奈も、引き止めはしなかったが、銀太の「良いよ、行ってこいよ」と言ったその顔が引きつっていたのを権城はよく覚えている
。
そして結局、本戦は初戦で強豪の吉大三に負けた。
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「しかしなぁ、まさかお前が5失点で投げ切るとは思ってなかったよ」
「え?」
「相手が吉大三だろ?もっと取られると思ってた。コールドも覚悟したけど、普通に試合んなって良かったわ」
紅緒が居ない吉大三戦、代わりに投げたのは権城だった。10安打を許し、バックのエラーにも足を引っ張られたが、しかし粘りの投球で何とか投げ切った。十分健闘と言える。むしろこの日は、紅緒という軸を失い決定打を欠いた打線の方が不甲斐なかった。
「まぁー、夏はどうなるかなー。まーた4回戦かな。一度くらい、報知高校野球にも載りたかったけど、仕方がないか。」
「……」
権城はモヤッとした。
何にモヤッとしたかと言うと、もう既に高校野球が終わった気で居る銀太の様子と、
そして何より、「負けた試合」のピッチングを褒められるなどと言うのは、権城にとっては初めての経験だったから。勝たせるのが自分の役割、そして責任。中学の時はそう思ってきたし、そう思われてきた。それが今や、負けたのにも関わらず、よく頑張りました、などと言われている。
(もっともっと、努力はしなきゃいけないな)
ヘラヘラしている銀太をこっそり睨みつけ、権城は思った。
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