第百七十一話 三河口の戦いその七
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信玄は傍にいる高坂を見た、そのうえで彼に告げた。
「源助、ではな」
「はい、それでは」
「後詰は御主と幸村に任せる」
二人にというのだ。
「頼むぞ」
「畏まりました、それでは」
「織田を防げ、そして甲斐に戻るのじゃ」
「さすれば」
高坂は確かな声で信玄に応えた、そしてだった。
武田軍は風の様な動きで陣を動かした、そうしてすぐに撤退に入る。北への進軍を瞬く間にはじめたのである。
それを見てだ、右翼を率いていた安藤が唖然として言った。
「何と、もうか」
「うむ、我等が攻める前にな」
「もう退きにかかるとは」
「信じられぬ速さじゃ」
安藤に稲葉と氏家、不破が応える。
「ここで我等が攻めると負けるからか」
「そう見てじゃな」
「もう退くか」
「流石じゃな」
唸る様にしてだ、また言う安藤だった。
「我等の動きも勝敗も読んでおるわ」
「しかしここはじゃ」
氏家が安藤に言ってきた。
「諦めてはならぬ」
「うむ、このまま追うぞ」
そうするとだ、安藤も氏家に応える。そうしてだった。
己が率いる右翼をさらに進ませる、だが武田軍の動きは速い。
まだ戦う姿勢だった織田軍から離れ整然として北の信濃に向けて退きにかかる、その動きは信長も見ていた。
それでだった、彼は全軍に命じた。
「言うまでもないがな」
「はい、ここはですな」
「武田の軍勢を追いますな」
「そしてじゃ」
そのうえでだというのだ。
「追いすがり倒すぞ」
「わかりました、では」
「今より」
「うむ、追うぞ」
こうしてだった、織田軍は退く武田軍を追いにかかった。しかし敵の動きは存分速くしかもその後詰の陣はというと。
寸分の隙もない、滝川がその陣を見て明智に唸って言った。
「十兵衛殿、どう思われるか」
「武田の後詰の陣ですな」
「見事じゃのう」
唸って言う言葉だった。
「まさにな」
「全くですな」
明智も唸って言う。
「あの陣は」
「寸分の隙もないわ」
「あの後詰は高坂弾正昌信、それに」
「またあの男か」
滝川は見た、彼の姿を。
「真田幸村か」
「あの者ですな」
「何という男じゃ」
滝川、織田家でもかなりの切れ者であり戦上手である彼ですら幸村を見て唸るのだった。その赤い具足と陣羽織の若武者を見て。
「退きでも働くわ」
「いや、大層な強さでしたぞ」
ここで慶次が出て来て滝川に笑って言ってきた。
「あの御仁は」
「そういえば御主があの者と一騎打ちをしておったな」
「はい、その通りです」
「それでどうじゃった」
「全くの互角でしたぞ」
慶次は笑ってこう滝川に答えた。
「それがしと」
「御主でもか」
「はい、才蔵殿は高坂殿と互角でしたぞ」
可児のことも
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