第十六話 黒蘭の力その十
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「あまりにも」
「そうよね、まさかと思うけれど」
「あの二人も孤児だったとしたら」
「何か有り得ないまでにね」
「力の持ち主達は共通点が揃ってるわね」
「孤児でしかも高校二年生で」
「しかも八条学園にいる」
この三つが揃うとなると、というのだ。
「偶然としては」
「あまりにもね」
「ええ、揃い過ぎているわ」
「あたしもさ、急にだったんだよ」
薊もこう言う。
「院長さんにこの学校に転校してくれって言われてさ」
「横須賀から来たのね」
「ずっと横須賀にいるって思ってたんだけれどな」
それが、というのだ。
「本当に急にだったよ」
「何かあったのかしら」
「そう思ったりもするよな」
「ええ、やっぱりね」
「今思うと不思議だな」
「横須賀から神戸は遠いから」
同じ港町でもだ、新幹線でも何時間もかかる。
「まして薊ちゃんって孤児院にいたから」
「一人立ちするまではってなるだろ」
「それでどうしてなのかしら」
「院長さんに聞いてみるか?」
「そうする?」
「それでも何かな」
ここでだ、薊は深刻に考える顔で述べた。
「院長さんことの真相言ってくれそうにないな」
「そんな気がするのね」
「やっぱりさ、話せることと話せないことってあるよな」
「どうしてもね」
「そうだろ、あたしも力のことなんて言えないしな」
「その火のことを」
「ああ、とてもな」
薊にしてもだった、そうしたことは言えなかった。このことはあくまで彼女達つまり力の持ち主と親友である裕香とそれに理解者である智和だけだ。
「言えないな、こんな突拍子もないこと」
「どうしてもね」
「そのことと一緒かもな」
「院長さんも言えないことがあるわよね」
「嘘は言わない人なんだよ」
このことも言う薊だった。
「けれど言わないことはな」
「言われないのね」
「そうした人なんだよ、だからな」
「このことも」
「話してくれないだろうな」
薊はこう予想するのだった。
「やっぱりな」
「そうなのね」
「あたしもおかしいと思うよ」
「力の持ち主が全員なんてね」
「孤児とかな」
しかも同じ歳で八条学園に集まっているからだ、考えれば考えるだけ偶然が揃い過ぎていておかしいというのだ。
「怪人まで出て来てな」
「そうそう、彼等のことがわかったよ」
智和がここで薊に応えて少女達に言った。
「遂にね」
「あっ、そうですか」
「遂になんですか」
「DNAの検証結果がですか」
「わかったんですか」
「うん、調べてくれた人が驚いてたよ」
智和は顔を明るくさせて自分に言ってきた少女達にまずはこう述べた。
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