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SAO編
口は災いのもと
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ボスの咆哮よりも背筋を凍らせるアスナのそれに、必死にこくこくと頷く。視界がぶんぶんと揺れてさっきまでの感傷に浸っていた俺がなんだか恥ずかしくなってくるが、そんなことは二の次だ。

「にしても……ここは広いし人は少ないし、開放感あるなぁ」

 これがもし現実の身体だったら脳震盪でも起こすんじゃ無いかと思うほど、高速で頭を上下させていた俺は、キリトが背伸びをしながら言ったその言葉にアスナが反応したのを見て首肯を止めた。余計なことは言うまいと人知れず唇を噛む。噛みすぎて少し唇が痺れたような感覚がした。

「なら君も引越せば」

「金が圧倒的に足りません」

「……あ、そうだアスナ」

 肩をすくめて答えるキリトを横目に、気になることがあってアスナの名前を呼ぶと、さっきの二の舞を警戒してか鋭い視線を向けられる。分かってる、と前置きしてから、いくらか鋭さが緩和したアスナに視線を合わせた。

「大丈夫なのか?さっきはラッセルが居たから良かったけど……」

「……うん。ラッセルにはよく助けてもらってる……けど……」

 逆説をこぼして、一度言葉を切ったアスナはくるりと後ろを向くと、ブーツのかかとを何度か鳴らす。キリトもこのことについては気になっていたようで、じっと言葉の続きを待っていた。

「わたし一人の時に何度か嫌なことがあったのは確かだけど、護衛なんて行き過ぎだわ。要らないって言ったんだけど……」

「参謀にでも押し切られた?」

「……うん」

 キリトが続けた言葉に、俯いたままこくりと首を縦に振ったアスナは、沈んだ声でギルドの辿った過去を悔やむような言葉を落とす。体を半分だけ振り向かせた彼女の瞳に、どこか縋るようないろが宿る。すぐ傍で、キリトが息をのむ気配がした。アスナの視線の先に居る彼は、何を思っているのだろう。おおかた、利己的な選択をしてしまった自分の中に彼女にかけるべき言葉を探しているのだろう。数秒間にわたる沈黙を、先に破ったのはアスナだった。

「まあ、大したことじゃないから気にしなくてよし!早く行かないと日が暮れちゃうわ」

 アスナがキリトから濃紺に沈みつつある湖面に視線を移して、歯切れの良い声出して街路を歩き出した。キリトも彼女に続く。

「……」

「ポート?行かないのか?」

 数歩進んで、立ち止まったままの俺にキリトが足を止めた。アスナはキリトよりも先を歩いているからか、まだ気づいていないようだった。

「アスナ!」

 突然声を張り上げた俺に、アスナだけでなく、決して少なくはない数のプレイヤーの注目を浴びてしまう。中には驚きから立ち止まった人までいた。足を止めた彼女が長い髪を揺らして振り返る。艶やかな栗色の髪越しに、アスナと目が合った。ソロを選んだ俺に、彼女にかけ
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