アカデミー編
大太刀
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ずらうのは愚かだとそう思って、彼女のことを思考から排除する。
次と呼ばれる声を聞きながら、カトナは教室からこっそりと抜け出す。
気配を殺すのは、昔からうまい。追っ手から逃げるためにはどうすればいいのか、体に叩き込まれている。それに、どうやれば他人の視線を逸らすことが出来るかなんて、カトナが一番よく分かっている。
まぁ、こんなのうまくても意味ないんだけれど。特に、こういう相手には。
ちらりと、後ろを見る。
いつものように彼が立っていた。
どこに行ったってすぐに見つける共犯者に、カトナは肩をすくめる。
「サスケ、授業、いいの?」
「忘れてんのか。今日は卒業試験だから、ねぇよ」
「そっか」
こくりと頷いて、カトナはサスケを見つめた。
「落第、だって」
「…ぶちのめすか」
カトナは野蛮だなぁと、くすりと笑う。
小さなその笑みに、サスケは思わずカトナの長く紅い髪の毛を掻き混ぜた。
その行為だけで、カトナの緩んでいた涙腺がぶわりと崩壊する。
「だめだって、わかってたよ」
「ああ」
「しって、た、んだ」
「ああ」
「でも、がんばった、がんばった、んだ」
「ああ」
「もしかしたら、って、おもうくらい、がんばった」
カトナの頭を自分の胸に押し付けるようにして抱きしめる。
カトナの肩が小さく震えだした。いつもよりずっとずっと小さい共犯者の頭を、サスケは更にくしゃくしゃ撫でまわす。
「結局、無駄だったけど、頑張ったんだよ」
カトナが小さな声を漏らしながら、サスケの胸に縋る。
「がんばった、んだよ」
「…よくやったよ」
ぽんぽんと頭を撫でる。
なるべく、兄がやっていたようにやさしいしぐさで彼女の頭を撫でて、耳元で囁く。
そうすればそれだけで、へにゃりとカトナの顔が歪んだ。
それを見て、ふと、サスケの心の奥底で闇が蠢いた。彼の耳元で誰かが囁いて、誘いをかける。
慌てて首を振って、サスケはその言葉を消し去った。
そんなにつらいならもう、一緒に死んじまおうか、なんて。
駄目だとサスケは必死に己を押しとどめる。
まだ駄目だと己を抑え込む。
せめてカトナが死にたいとこぼすまで。その日までは耐えなければ。
サスケはゆっくりと彼女の額に額を合わせた。
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