第132話 山賊退治と新たなる展望
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
劉正礼だ。礼は不要だ」
正宗は士仁に名乗ると彼女の顔はこれでもかと驚いていた。瞳を見開き酸欠の魚のように口を開いていた。暫くして落ち着いた士仁が話を切り出した。
「巧みな用兵、そして兵達の勇猛さと軍装を拝見して只者でないと思っていましたが、かの高名な劉将軍でございましたか」
士仁は笑顔で正宗を絶賛した。
「村の攻撃に集中していた賊を後方から襲撃しただけだ。兵数もこちらが三倍以上。勝って当たり前の結果だ」
「騎馬にて賊を撹乱して下さったお陰で村の防塁を抜けられることはありませんでした。それに劉将軍は噂に違わぬ鬼神振りでございました。劉将軍の力を見て矛を交えようと思う者などいないかと」
士仁は正宗が単騎で賊の後方を蹂躙する様を防塁の奥から見ていたのだろう。賊とはいえ七百の武装した人間を一瞬で嬲り殺しにする部将と戦いたいという物好きはそういない。
「士君義、お前はこの村の者なのか。風体からして農民という訳はないだろう?」
正宗は士仁の甲冑を上から下へ視線を向け言った。彼女の甲冑姿は正宗の指摘通り板についており、それなりの武の心得はあるように見える。
「生き残ることができたことで頭が一杯で申し遅れました。私は劉県令の配下です。最近は賊の数が多すぎて兵が足らず対応に苦慮していまして。この村が賊に襲撃されるという報を受け、百五十ばかりの兵を引き連れてきましたが防戦するのが手一杯でした。劉将軍には感謝してもしきまれません」
士仁は頬をかきながら困った表情で正宗に話をした。正宗は士仁のある言葉が頭に引っかかった様子だ。
「劉県令?」
「はい。臨穎県の県令は劉玄徳様です」
正宗は『劉玄徳』の名を聞くなり眉根をひそめた。
「劉将軍は劉県令とお知り合いですか?」
「知らんな。劉玄徳とはどんな人物なのだ」
正宗は表情を元に戻し、桃香のことなど知らない素振りで士仁に話かけた。
「少々天然な所がおありですが、根を善人な方だと思います。でも関羽様が旅に出られたのは痛かったです。関羽様も酷いです。書き置きを残していつのまにかいなくなるなんて。お陰で私達がどれだけ苦労していることか」
士仁は腕組みをしながら目を瞑り愚痴を言いはじめた。その愚痴の中で愛紗が桃香の元を出奔したことを聞き衝撃を受ける正宗。正宗は動揺するが直ぐに平静を装う。
「士君義、苦労しているようだな」
正宗は士仁を同情するように見つめた。士仁は正宗の瞳に哀れみがあることを感じとったのか慌てて否定をはじめた。
「劉将軍、違います! 違います! 劉県令に不満なんて全然、全然抱いていないです。ちょっと給金に色つけて欲しいなんて全然思っていません」
士仁の弁明は話の最後には本音を漏らしていて白々し
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ