第132話 山賊退治と新たなる展望
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黄巾賊の乱の折り、大陸は荒れ果てた。『たかが農民』と侮らていた者達が寄せ集まり群衆と化し、この大陸を揺るがすほどの暴徒と成り果てたではないか。火を小さい内に消すに限る」
正宗は麗羽を見て真剣な表情で説明した。それを聞き麗羽は黙ってしまった。
「正宗様、現在の潁川郡は戦火から逃れてきた流民が多いと聞きます。彼らにとって潁川は縁者のおらず、慣れない土地。日々の生活の糧を得る術もなく、自ずと賊に身を落とすか飢え死にするしか道がありません」
先頭を行く正宗に後方から桂花が彼に声をかけた。
「桂花、お前の言うことは分かっている。だがな、全ての民の救えると思うなど傲慢でしかない。例え皇帝であろうと全ての民を救うことはできない。できることは少しでも多くの民を救えるように努力するだけだ」
「彼らは救うに値しない者達だといいますの?」
麗羽は正宗を険しい表情で見た。正宗は麗羽の表情を見て、一瞬口を紡ぐが口を開いた。
「ないな」
正宗は麗羽に厳しい表情で言った。
「賊に身を落とし真面目に生きる者達に危害を加えた段階で『守るべき存在』ではない」
「彼らとて好きで賊に身をやつしているわけではないかもしれないじゃありませんの!」
麗羽は正宗に声高に批判した。周囲の者達も二人の様子を窺っている。桂花は困った表情を浮かべていた。
「だろうな。好きで賊をしている者は見ればわかる。麗羽の言う通り賊を止め真っ当な仕事につきたいと思っている者も中にはいるだろう。だがな。命を助けてやって、その後どうするのだ。彼らが賊に落ちるのは生活できないからだ。彼らに生活の基盤を与えなければ賊に落ちるしかない。そして、今は人を殺すことに抵抗があるが、いずれ人を殺めるだろう。情けをかけたつもりが、その者は罪なき民を殺し生活の糧を得るのだ。来る日も来る日もな。これこそ理不尽だろう。日々をただ真面目に生きている者がそうでない者によって未来を断たれるのだ。私は禍根を立つため、この先犠牲になる者を減らすため、その原因となる者達を情け容赦なく殺しているにすぎない」
麗羽は正宗の言葉に衝撃を覚えているようだった。麗羽は都暮らしが長く特定の人々としか接していない。また、宮廷を襲撃したとはいえ殺したのは完全武装し殺気を放って襲ってくる郎官達と諸悪の根源と思っていた宦官達。麗羽は必要悪の存在を直視する機会がなかったのだろう。麗羽は瞳に涙を貯め、正宗に表情を見られまいと顔を隠した。
「正宗様」
冥琳が正宗を厳しい表情で睨む。正宗が周囲を見渡すと痛い視線を感じた。
「麗羽、すまない。言い過ぎた」
正宗は反省した様子で麗羽に頭を下げた。
「正宗様、お気遣いに及びませんわ。私が世間知らずでした。正宗様のお辛い気持ちも理解せ
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