第五話
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るのだろう。下心を隠す気などさらさら無いらしい。
平常を取り戻しつつあった心理で、危うく騙される前にそれをすくい取り、『それくらいなら払ってやるよ』となだめてやると、シーラ的にはそれでオッケーなのかニヤリといつもの笑みを零し、早業でウインドウから巨大をしまうと、すぐさまいつもの片手剣を腰に携えた。
「……というかさ、ユウ、さっきのアラーム音、聞こえた?」
腰に吊るした鞘の位置が気に食わなかったのか、がちゃがちゃとそれをいじくっていたシーラが、目線をこちらに向けた。
『アラーム』と言われてはたと思い出す。いつの間に忘れてしまっていたのか、先ほどの轟音が耳に蘇った。
「そりゃ……聞こえたさ。あんなでっかい音。むしろ聞こえてないほうがおかしい。――何だったんだ、アレは」
「アラームトラップだよ。たぶんね。こんな低層のトラップだから、そう難易度は高くないはずだけど」
俺が尋ねることを予期していたのか、脊髄反射のごとくシーラが答えた。
腕を組んでふんぞり返るその顔を少しばかり睨めつけ、俺は再び索敵スキルを発動させると、直線に伸びるこの空間を慎重に見回しつつ、言った。
「一応確認だ。そのアラームトラップとやら、見てみるか」
「おお!やっとユウにも戦闘以外の興味が出てきたよ!行こ行こ!」
予想外の返答に、内心でズルッとこけそうになる。なんとか表に出すことは自重し、咳払いに紛らせて消化すると、俺は、左手に固くへばりついていた短剣をようやく腰に戻し、先に歩みを始めていたシーラを追った。
あいにく、とうの前に音は止んでしまっていたが、シーラには方向がわかるらしい。細かな場所は総当たりするしかないだろうが、続ければ、いずれ何かしらの異常は見つかるはずだ。あんな大きな音が響いたのだから、それこそ、聞きつけたプレイヤーたちでにぎやかとなっているに違いない。
まあ、今まで通り狩りながら探せばいいだろう。そう考えながら最初の角を曲がった時だった。異常は案外と早く見つかった。
おおよそ五十メートルほど前方に、索敵スキルによって複数の光点が表示されていた。赤い点、攻撃的モンスターを示す点が、丸く円形に並んでいる。そしてその真ん中に――
目にした瞬間、俺は左の手を短剣の柄に回し、光点の方向へ突進を開始した。索敵のスキルを取っておらず、突進の理由はシーラには見えていないはずだが、俺がダッシュで彼女を追い抜いた瞬間に、それを察したらしく、言わずとも、その脚も俺へ続いた。
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