第五話
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の命令拒否。その時、凝視していたフェンシーの鉄仮面の奥、目が見開かれた。
次いで、力を溜めに溜めていたヤツの剣が動き始めた。ゆっくりと、刃が俺に向かって襲いかかる。
『避けろ』と、できうる限りの大声で念じる。だが、やはり動かない。
今すぐ動けばまだ間に合うというのに、俺の身体は諦めたように言うことをきいてくれない。
葛藤の内、とうとうヤツの射程圏が俺の全身を包んだ。途端、心身共に力が抜けた。フェンシーの剣が、確実なスピードで間を詰めてくる。
いつの間にか、思考以外の時間がスローになっていたことにも気づかず、俺はただ、迫る刃を凝視し続けていた。
もう一センチ、それだけ進めば、俺の頭部に赤いダメージエフェクトが吹き荒れる。そこまで肉薄した時だった。
「………」
フェンシーの動きが静止した。スローモーションなどではない、完全な停止。――と、
ぱしゃん
なんていう間抜けな音で、フェンシーは透き通った青の細切れに変わり、消えた。
その後ろに、
「ふー、危ない危ない。ぎりぎり間に合ったね」
いつもの片手剣ではない、巨大なモノを肩に担いだシーラの姿があった。
大きい。俺の知る限り、今のこの世界で最も大きな武器種は、両手用戦斧(ツーハンド・バトルアクス)だったはずだが、その巨大はそれよりももう一回り、持ち主であるシーラの身の丈ほどの大きさがある。
それに、驚くべきはその攻撃力。シーラの台詞からして、その巨大を使い、フェンシーを消し去ったのは明白だが、記憶では、あのフェンシーにはほとんどダメージを与えておらず、ヒットポイントは八割も残っていたはずだ。
それを、俺が硬直しているわずかな間に削り取ってしまうとは、クリティカル補正が入ったのだとしても尋常ではない。
いったいあれは――
「秘密兵器」
俺の心でも読んだのかというタイミング、もう何番煎じかもわからないドヤ顔で、シーラはふふんと鼻を鳴らした。
「ホントならイルファング……この層のボスの名前なんだけどね、その時にふりまわして皆びっくりさせようと思ってたんだよ。ユウにはネタバレになっちゃったけどさ……」
わずかに伏せられた、残念そうな眼の後、シーラは、放心してリアクションの無い俺に飽きたようで、やはり肩のモノが重いのか息を吐きつつ背中を折ると、その巨大を両手へと運んだ。
彼女は、その刃を目線で一巡りなぞりおえると、あからさまに苦い顔を作り、これまた大げさにため息をついた。
「あーあ、これ耐久値がすごく低いから、さっきのでけっこう刃こぼれしちゃったなぁー。下級品のくせしてやたらと高いんだけどなぁー」
チラチラとこちらを見つつ、シーラは言う。その顔は苦いままに保たれているが、本心ではいつもの悪ガキに戻ってい
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