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SAO〜刹那の幻影〜
第五話
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の手を乗せた。

「アホか。最前線なんだぞここ。気なんか抜けるか――それにあのコボルト、いつものサルほどじゃないけど経験値は良いんだろ?狩らないと損だ」

 言いつつ、シーラの手を引きはがそうと、両腕に力を込める。が、悲しきかな。シーラは俺とは真逆の筋力値優先のパラメータを選択しているため、貧弱な俺の筋力ではその手を一ミリとも動かすことができない。
 それでも諦めず、腕の筋力補正を全開にしていると、突如、両肩にかかる圧が倍増した。恐ろしいことに、先のが全力ではなかったらしい。たまらず尻餅をつくと、次いで頭上からシーラの声が降った。

「さっきのコボルトでここら辺のやつみんな狩りつくしちゃったんだから、次の湧出(ポップ)なんてまだまだ先だよ。だからさ、せめてそれまで休憩しようよ、きゅーうーけーいー!」

 どこの怪力幼稚園児だといわんばかりに、シーラが俺の肩を右に左にと揺する。
 いつものことだ、すぐに止むだろうと、駄々こね数秒までは右往左往する世界に甘んじる俺だったが、さすがにそれが十秒単位で続くとその限りでなく、わずかに吐き気を覚えた時点でなんとかシーラの魔手から脱出し、もちろん噴出した不快感を言葉に変え、吐き出した。

「……いい加減にしろよお前。何度でも言うぞ。ここは最前線、今俺たちが行けるエリアで最も危険な場所、最も強力な敵が出る場所だ。休憩ならこんな戦地ど真ん中じゃなく、どっかの安全地帯で言え。それに――」

 そこで俺は一つ息を吸う。
 何度も何度も、口でも心でも、自分にも他人にも、ずっと言い聞かせてきたことだ。忘れては、思い違えてはいけない。この世界は――

「このゲームは普通じゃないんだ。……遊んでんじゃねえよ」

 精一杯のドスを効かせて、後ろの一言を吐き捨てる。立ち上がり、取得したばかりの索敵スキルを発動させると、視界の端で、笑顔の消えた顔を伏せたシーラが、俺の忠告で固く結んだ唇を、わずかに開いた。

「……ごめん」



 このところ、こんなふうに嫌な空気で会話が終結することが多い。
 一ヶ月前、《はじまりの街》を出た後、俺はシーラの知識から最も効率の良い狩場を選び、かなり過密なスケジュールでレベル上げに没頭した。
 時には日の九割だったり、時にはそれこそ二十四時間フィールドを走り続けたこともあった。
 レベルが上げればその分だけ強力な敵を倒し、また上がればもっと強力な敵を求め、次々とフィールドを闊歩する。
 そんな毎日が続き、ちょうど俺のレベルが十二に達したころだっただろうか。今思えばそのころからシーラの様子がおかしくなっていった。
 俺がポーションを飲めばでかいため息をついたり、装備やらアイテムやらの補給に町へ戻れば何かにつけて文句を言い出したり、なんでもないはずの会話が喧
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