魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇1
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音を立てて捻じれ、身体は空に浮かび上がる。風に締めあげられた身体は動かなくなり――なけなしの魔力はどこかへ行ってしまった。
「やめておけ」
極彩色で描かれた抽象画みたいな世界の中で、光の声だけが妙にはっきりと聞こえた。
「この屋敷は、兄嫁の実家でね。彼女の身内に危害を加えるような、礼儀のなっていない客は、丁重にもてなすように細工がしてある」
どうやら、その身内に俺も含まれているらしい。光は苦笑したようだった。
「やめて、光お兄ちゃん!」
なのはは無事なのだろう。その声は大きく歪んでいて、別人のようにも聞こえるが。
「心配しなくても、ここでの戦闘を諦めれば効果は消える。あくまで続行する気なら……そろそろ心臓が止まる頃だろうが。一応言っておくが、さすがに死人は蘇らないぞ」
確かに、脈拍が弱まりつつあるように思えた。耳元でドクドク言っているのが、本当に僕の心臓なら、だが。
「お前達もだ」
どうやら、あの金髪の少女――達と言うからにはまだ他にもいるのだろうが――にもこの影響は出ているらしい。
(ああ、そっか。なのはも身内だ……)
一方的に戦えない訳ではない。向こうも迂闊には手出しできない。それに気付くと同時、身体から力が抜けた。光の言葉通り、徐々に症状が治まっていくのを感じる。
「それに、妹には手を出さないと約束しただろ?」
「いや、そりゃそうだけどさ……」
「でも、あの子もいくつか持っているみたい……」
「それは後で考えよう。そろそろ恭也達が嗅ぎつけて飛び出してくるだろうし、それまでに御暇しないと面倒な事になる」
言うが早いか、光はさっさと屋敷の外に向かって飛び立った。どうやら空も飛べるらしい。今さら驚く訳もないが。
「待って! 待ってよ、光お兄ちゃん!」
ようやく五感が正常に戻った。ふらふらと立ち上がった僕の耳に、金髪の少女の囁きが聞こえた。
「ごめんね……」
なのはを見て、確かにそう言い残した彼女は――いつの間にか姿を現していた狼と共に、光の跡を追って空へと舞い上がっていった。
5
「恭也ッ!」
血相を変えた忍が駈け寄ってきたのは、なのは達の談笑が始まってから――ついでに言えば、美由紀と共に目を回して倒れたファリンの面倒を見始めてすぐの事だった。
「ごめんなさい! あの宝石が――」
今日月村邸に来た理由は――まぁ、忍に会いに来たと言うのも本当だし、なのはの気分転換になればと思ったのも本当だが――光達が探している宝石を見つけたとの連絡が入ったからだった。私室の宝石箱に入れてあったらしいのだが、どうやら少し目を離したすきに月村邸在住の猫がその宝石箱を蹴飛ばして持ちだしたらしい。猫と言うのはどうしてこう、ときおり思ってもみない事をするのか。まぁ、愚痴っていても仕方がないことではあ
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