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その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇1
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こう告げた。
「答える必要はありません」
 盗掘者。いや、この場合は火事場泥棒か。そう言った相手と遭遇したのは、別にこれが初めてという訳ではない。だが、彼女は危険だ。なのはに匹敵するほどの魔力を感じる。
(僕じゃ勝てないかも……)
 だが、ジュエルシードほどの力を秘めたロストロギアを、盗掘者に渡す訳にはいかない。覚悟を決め、なけなしの魔力を全力でかき集める。
「そうはいかない!」
 弱気になった自分を叱咤するように叫ぶ。と、
「ほう。随分と威勢がいいな」
 途端に聞き覚えのある――というか、何となくしばらく忘れられそうにない……ついでに言えば、できればもう聞きたくなかった声がした。
「その娘を巻き込むなと言ったはずだが……。どうやら命がいらないようだな」
 高町――いや、御神光というべきか。この世界の魔導師は、その少女の傍に静かに立っていた。
「ひ、み、ひ、ひ、つ……」
 呼吸が引き攣って、自分でもよく分からない呪文のようなものを唱えだす。どっと冷や汗が吹き出した。まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。何がどうまずいか分らないくらいにまずい。絶対何か良くない事が起こっている。
「光お兄ちゃん!」
 叫び、駈け寄ろうとするなのはだったが――
「俺が動きを止める。お前は、早く封印しろ」
 それより早く、光が告げた。それは、なのはに向けての言葉ではない。
「なるべくお手柔らかにな」
 もう一人の魔導師――金髪の少女に向けての言葉だった。それと同時、光は右手を掲げる。その先に、奇妙な砂時計の幻影が浮かんだ。金色の砂が入ったその砂時計の幻影は、何故か下から上に向かって砂が流れ始めた。
「待って!」
 なのはの制止より先に、猫が不自然に動きを止める。まるで、時間が止まってまったかのように。その隙に、金髪の少女はあっさりとジュエルシードを封印してしまった。
「光さん、何で!?」
「悪く思うな。俺はこの子に協力する事に決めたんだ」
 最悪の回答だった。一体何故。彼には、僕が正規の――少なくとも許可をもった回収要員だと言う事は説明してあるはずなのに。
(僕なんかじゃ勝てないかもしれないけど……!)
 いずれにせよ、彼を止めなくてはならなくなった。なけなしの――どころか、死に物狂いで身体中から魔力をかき集める。それでも、自分が彼に勝てる姿など想像もできなかったが――
(クソ、震えている場合じゃないのに!)
 性質の悪い熱病にでも罹ったかのような、悪寒が身体を包み込む。だが、それでもやらなければ――酷くなる寒気を何とかねじ伏せる。途端、意に反して身体から力が抜けていく。さらには、視界までが歪み始めた。
「あ、れ……?」
 世界が捻じれる。立っていられなくなって、地面に崩れ落ちた。地面ってどこにあるのだろう。グネグネと
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