魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇1
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。つまみ食いならばれないように――せめて隠そうとするような努力を見せてもらいたいものだ。
(いや、下手に小賢しくなられる方が問題か……)
鼻歌を歌いながらテーブルを拭くアルフに、こっそりとため息をつく。悪気がない訳ではないのだ。悪いと理解していて……それでも、じゃれてくる。信用の形として。それなら、この程度の悪さは可愛いものだ。
(なのはは、あまり我儘を言わなかったからな)
リブロムには散々甘やかせすぎだと言われたが――そもそも、手を焼くような我儘など言われたためしがない。思い出し、再びため息をつく。自分が未練を断ち切るには、まだしばらく時間がかかるようだった。
(いや、断ち切れないのかもな……)
右腕が疼く。突如として蘇った殺戮衝動は、日増しにその存在感を強めていく。まるで恩師と――リブロムの時と同じだった。もっとも、いくら未練があろうとも、これが目覚めてしまった以上、なおさらあの家には戻れない。そんな事は分かっていた。
帰る場所を切り捨てたら、その郷愁に苦しめられる。なるほど、かつての恩師と似ているかもしれない。
「どうしたの、光?」
気づかうように、フェイトが覗きこんでいた。気付けば、手が止まっていた。何でもないよ、笑って見せる。似ていたとしても、恩師とは違う。まだ誰も失われていない。例え帰れなくとも。それに、決して孤独ではない。例え仮初でも。そこには、少しだけ救いがあるように思えた。
「さて。今日はどこを探したものかな」
朝食を済ませ、片付けを終えてから、再びテーブルに集まる。俺達の目的は、あくまでもジュエルシードの回収だ。……少なくとも、当面は。
「そうだねぇ……。正直、街中は一通り見終わった気がするし」
「そうだな」
暴走した場合、被害が大きくなる街中から捜索を進める。その方針に、フェイト側も特に異議を申し立てはしなかった。取引があったから、という事もあるだろうが、それ以前に事を荒立てたくないのは彼女達も同じだという事だろう。それに関して、自分達の意見が対立する事はない。
「ってことは、今度は街の外に行くしかないんじゃないかい?」
「その通りだが、郊外という括りでは範囲が広すぎる。ある程度の範囲ごとに区切って、一つずつ潰していかなければ収拾がつかないだろう」
彼女達と行動を共にするようになってから、街の異境は使用していない。理由はいくつかあるが、最大の理由としてここはすでに異境の外だった。今も少しずつ拡大しているが――残念ながら、今の自分にはそれほど広大な異境を構築し管理する事などできない。
もっとも、それ以前の前提として異境の存在が魔導師達に知られるのは避けたいという事もあるが。
「えっとね……。それなら……」
デバイスから地図を投射しながら、フェイトがとある一点を指差した。
「この
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