魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇1
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全く、どいつもこいつも業が深い。
兄嫁の実家の御家騒動に巻き込まれ、思わず毒づく。
この騒動、一体誰の業が原因なのか。例え死んでも魔物とは縁が切れないどこぞの怪物か。その怪物――得体の知れない魔法使いをわざわざ連れて帰った士郎達か。あるいは、吸血鬼を嫁に貰うそこの長男か。それとも、金欲と権力に溺れ、身内の恋路一つ満足に祝福できないこの馬鹿どもか。
何であれ、これだけ因果が重なりあえば、吸血鬼同士の抗争に巻き込まれるくらいはもはや必然と言わざるを得まい。
そう。相手は吸血鬼だ。もっとも、今まで散々殺し合った魔物に比べれば遥かに劣る――が、それは自分ひとりだけだった時の話だ。連中の狙いは小さな可愛いお姫様。その彼女を――将来の義妹を庇ったまま、しかも向こうは複数人で銃器を持っているなれば、さすがにいくらか分が悪い。まぁ、もっとも……。
「ごめんなさい……」
当然ながら、お家騒動である以上はそのお姫様自身も吸血鬼な訳だが。
気にするな。傷を負った身体を誤魔化しながら、泣きじゃくる彼女を宥める。ふつふつと怒りがわき上がってきた。全く、どいつもこいつも業が深い。何もこんな少女を巻き込む事はないだろうに。
金欲は人を狂わせる――恩師の友人の言葉だった。全くその通りだ。そして……。
物陰に身を潜め、呻く。欲望に溺れ、魔性に堕ちたもの。それを魔物と呼ぶのだと。
「でも! こんなに怪我をして……」
自分の怪我など取るに足らない。例え肉片になっても、死ぬ事はないだろう。何にしろ、自分は不老不死の怪物なのだから。彼女達より、よほど人間離れしている。
傷は魔法で癒した――そんな適当な嘘で誤魔化し、立ち上がる。いい加減、追い回されるのにも飽き飽きしていた。ここから先は、狩りの時間だ。
魔法使いの本業が、魔物の殺害だと言う事を思い知らせてやる。
「ありがとうございました」
……結局、誰も殺しはしなかったが。
だからだろう。全てが終わった後、彼女はそう言って微笑んだ。彼女に恐れられていないのなら、幸いだった。彼女は妹の親友の一人なのだから。
ともあれ、この一件を契機に、自分は三つ目の異境を構築する事となる。
月村邸の異境。それは、毒属性を基本とする。いや、ゴリアテ迷宮に近いと言った方が適切だろうか。もちろん、さすがに見た目まで再現した訳ではないが。つまりは、そこに住まう吸血鬼の姫君達に仇をなす侵入者――その欲望を抱くものの立ち入りを拒む。具体的には侵入者を徐々に蝕み、全ての力を奪い去っていくという代物だった。異変に気付き、退けばよし。それでも先を進もうとするなら――最後は心臓の鼓動を奪い取る。そういった異境である。
「何でお前はそういう物騒な魔法ばかり使うんだ?」
将来の義姉と義妹のためにと、せっかく作っ
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