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女々しくて
第四章

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「俺だって食わないといけないからな」
「それに駆け落ちしたってな」
「相手は全国区の広域暴力団の大幹部だからな」
「現組長の側近中の側近でな」
「次期組長の後見役になるとか言われてるからな」
 そうした相手だからだ、あの娘の親父は。
「駆け落ちしてもな」
「草の根分けて探されるぜ」
「最後まで逃げきれるなんてな」
「とても無理だぜ」
「そうだろうな、じゃあやっぱりな」
 また言った俺だった。
「無理か」
「それわかってるだろ」
「御前だってな」
「今回は諦めるいかないんだよ」
「仕方ないんだよ」
「くそっ、そうするしかないのかよ」
 俺は俯いて忌々しげに言った。
「あの娘を」
「ああ、そもそもあの娘が勤めている喫茶店もな」
「実はあの娘の親父の事務所の経営だしな」
「ヤクザがやってる喫茶店だからな」
「近寄るべきじゃないぜ」
 このことがわかったのは最近だった、はじめてその店に入ってあの娘を見て一目惚れした時はそんなことは夢にも思わなかった。
 けれどだ、そのことも知ってだ。ツレ達は俺に言うのだ。
「皆御前に意地悪で言ってないんだよ」
「御前の為を思って言ってるつもりだからな」
「だから聞いてくれ」
「諦めてくれよ」
「・・・・・・時間くれ」
 これが今の俺の精一杯の返事だった。
「少しな」
「ああ、わかった」
「じゃあな」
「もう暫くの間はな」
「憂さを晴らせよ」
「酒なり何なりでな」
「そうするな、ちょっと有給取るぜ」
 そうしてだった。
「酒飲んで忘れるさ」
「飲み過ぎには注意しろよ」
「まあそっちは手遅れみたいだけれどな」
「飲まないとやっていられないんだよ」
 今の俺はそうだった、夜に潰れるまで飲まないととてもだった。あの娘のことで気が狂いそうになる位だ。
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