#8『膝下の街』
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?皆さんも、もっと楽にしてくださいよぅ」
「馬鹿かお前は!いやすまん、馬鹿なんだよな!?」
そう叫びながらドアを潜るなり、クドの頭を殴りつけたのは、炎のような色をした髪の毛の男だった。年齢は団長と同じくらいか。
「スワイ閣下!」
「畏まらなくていい。……あのなぁクド、勝手に出回るな、と何度言ったらわかるんだ」
「何回言っても分からないですよーだ。僕は自由に生きるんです」
「この野郎……」
そういってぶるぶる震えはじめるのは、クロウ・D・スワイ。《教皇補佐官》……つまり、クドのお目付け役だった。
アドミナクドは放蕩者ではないが、自由気ままで無邪気な性格をしている。いつもふらりとどこかへ行って、身分をわきまえずにあれこれ騒ぎを起こすことも少なくない。縛られない、といえば聞こえはいいのだろうが、彼の《教皇》という身分を考えれば少し不適切では?と感じてしまうのは仕方がない事だろう。
そんなクドとスワイは幼馴染でもあるといい、子どものときから今のような関係だったというのだから、スワイは気苦労が絶えないだろう。同じく友人の自由度の圧倒的高さに悩まされる身としては、トマトは彼に共感と同情を禁じ得ない。
「そうだ、団長さん、このデイビットさんもつれてケーキ屋めぐり行きましょうよ。お代は僕が……というか《教会》が負担しますよ」
「おい!?そんなところで権力を使うな!というか勝手に出ていくな!」
「勝手じゃないですよ。今この場で宣言しましたから」
「あ!俺いっぺん行ってみたいケーキ屋あったんです!よ、よろしいでしょうか!」
いつも大体こんな感じでゆるゆる過ぎていく時間。本当に此処が犯罪者の尋問をするための部屋だったのか疑いたくなってきてしまう。
「分かった。行くか」
聞き捨てならないことを聞いた。
「というわけだ、トマト。こいつの手錠外すぞ」
「ちょっとまてぇぇぇぇ――――――――――!?」
結局、奮戦むなしくデイビットの手錠は外された。彼らはそろってケーキ屋めぐりに出発した。尋問室には、肩を落とすトマトと、ため息をつくスワイと、ハッピーターンを食すポットだけが残された。
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