#8『膝下の街』
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がホットケーキ八十枚(それぞれ別の味付け)というのはどうなのだろうか。そしてそれを毎回当然のようにあっさりと完食するハードリアはどうなっているのだろうか。
「……ってちょっと待った!団長!?何やってんの!?」
「ん?手錠を外しているのだが……」
「見りゃわかる!一応聞いただけ!……と言うかその手をHA☆NA☆SE!!」
この男の奇行には毎度毎度頭を悩まされるが、まさか拘留中の罪人を解放しようと思うとは考えつかなかった。何とかハードリアを手錠から振りほどこうとするが、一応は後方支援でしかないトマトと、前衛である団長の筋力には圧倒的な差がある。引きはがすことができない。
マズイ……トマトが冷や汗を流し始めた、その時だった。
さらなる災厄が訪れたのは。
「あれれ〜?みなさん、何をしてるんですかぁ?」
開きっぱなしだったドアから、純白の髪をポニーテールにした、一人の青年が姿をあらわした。驚愕に固まる一同。ニコニコ笑いながら、青年は部屋に入って来る。
「あ、アドミナクド陛下……」
青年の名は、アドミナクド・セント・デウシバーリ・ミゼレ。《教会》の長にして、あらゆる《箱舟》を統治する、人類で最も高貴な位にある存在。そう、彼の肩書は――――《教皇》。世界の支配者だ。
だが、そんな名前とは無縁の存在であるかのように、無邪気に青年は笑う。
「やだなぁ、陛下なんて呼ばないでくださいよ。『クド』でいいって言ってるじゃないですか……ところでトマトさん、今日は漬物ないんですか?」
「そんな場合じゃないことぐらいわかるでしょ」
おもわず突込みを入れてしまった。
トマトの祖母は、御年125歳だ。磨き上げられた漬物の腕前はますます冴えわたり、特にナスとかキュウリのあたりはこの世の物とは思えない極上の味を醸し出している。以前皆に振る舞った時から、クドはあれが非常に気に入ったらしく、実家から漬物が届くと必ずと言っていいほど「ください」と言いに来ていた。
「そっかぁ、残念ですねぇ……あ、団長さん、そのケーキって『ラ・ルシエル』のですよね。メグミカさん元気ですか?」
「家内をいたわって下さりありがとうございます、陛下。子宝には恵まれないものの、お陰様で仲良くやっていけております」
「それはよかった。あ、そっちのお兄さんは初めましてですね。お名前は?」
トマト、団長のつぎは窃盗犯の男だった。それもにっこり笑って、堂々と名前を聞く。
男はがちがちに緊張しながら、消え入るような声で名乗った。
「あ、あああああの、その、じ、自分……デイビット・ミュリエルとも、もうしまっす!」
「デイビットさんですか。いい名前です。ところでどーしてそんなに緊張してるんですか
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