第五十五話 相手も同じ高校生
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第五十五話
(……美濃部のスライダーにもしっかり合わせてくるか。さーすが口羽だよなぁ。)
あっさり同点に追いつかれ、宮園はむしろ感心したようにため息をついた。
打席には続いて、6番の熊田。これまた、いかにも強打者といった構えをしている。
ブン!
「ストライク!」
初球のストレートをフルスイングして空振り。
ワンストライクとなる。
(……今の、割と甘い球だけど空振ったな。)
宮園は意外に思った。初回の印象では、美濃部のストレートくらい平気で打ち返す感じだったが、今は甘い高さのストレートを空振りした。
(昨日まで対戦してきた連中と違って、振り遅れてる感じはないけど、でもこいつらでもあんな空振りするんだな。)
次はスライダー。美濃部が今度は良い高さに決め、熊田はまたもや空振り。
(……初回にストレートを打たれて、この回はスライダーを立て続けに打たれて、投げる球が無いんじゃないかと思ったけど……)
最後はフォーク。
懐に食い込むように決まり、熊田を三振に切ってとった。
(……そんな事はないな。同じ高校生だ。下位打線はやっぱり大した事ない。)
宮園は確信した。
次の7番、8番は内野ゴロ。
結局、無死二塁のピンチを、勝ち越しを許さずにベンチに帰る。
「OKナイピッチ!」
「立て続けに打たれた時は、一体どうなる事かと思ったわ〜」
「ホンマそれな。ヒヤヒヤしたけん。」
ベンチでチームメイトに出迎えられても、美濃部はむすっとしていた。どうやら、スライダーを連打された事が気に食わないらしい。
「……どうだ、宮園。何か分かったか?」
ベンチで防具を外し、打席の準備をしている宮園に浅海が声をかける。宮園はあっさり答える。
「別に口羽と言えども、超人が9人揃ってるって訳じゃないですね。」
浅海はニンマリして頷いた。
「そうだよ。今のお前らなら、十分何とかなる相手だ。でも、4番と5番には連打されたな。打たれたのは何?」
「スライダーですね。どちらも初球から。」
「狙っていたんだろうな。そう、口羽打線は何を投げても打たれる超人集団じゃない。その代わり、狙いさえ絞れば美濃部のスライダーでもキッチリ捉える技術はあるんだ。」
防具を外し終え、手袋をはめて打席に向かう宮園の尻を、浅海はポンと叩いた。
「相手を大きく見過ぎるのもダメ、小さく見くびるのもダメ。恐れず奢らず、な。」
「はい!」
宮園はベンチを飛び出していった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
二回は先頭の太田が三振に倒れ、一死から宮園が打席に向かう。木凪での練習試合では好調をキープし、冬の課題としていた打力もかなりついてきた。
バァン!
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ