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打球は快音響かせて
第五十五話 相手も同じ高校生
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「ボール!」

しかしさすがに、これまで打ってきた投手と口羽のエース伊東とは、馬力から何から違う。
初球のストレートの威力に宮園は目を見張った。

(速く見えるなぁ。美濃部より少し速いくらいに見えてたけど、何か見にくい)

マウンドにそびえる伊東は、その身長もあいまって、無茶苦茶にデカかった。初球がよく見えなかった宮園は、そのデカい姿を見て考えを巡らせる。

(……そうか。いつも普通のピッチャーに対する時のリリースポイントと伊東のリリースポイントはかなりズレてるんだ。だからいつもの感じで球を見てると、リリースポイントが視界に入ってこない。もっと視野を広く持って……)

背の高い伊東は、低めに中々球が集まらない。ストレートが浮いてくる事もしばしば。
当たり前である。リリースポイントと、低めのコースが誰よりも落差があるのだから。

(シバく!)

高めに浮いてきたストレートを、角度のマジックに気づいた宮園が叩く。
宮園にはしっかり球が見えていた。

カァーーン!

打球は放物線を描いてレフト後方へと飛んでいく。そのままグングンと伸びていく。

ポトッ

フェンスの向こうに白球が弾むと、三龍ベンチからはどよめきが起こった。

「おぉぅーーー!?」
「入った!入りよった!」
「マジかマジかーっ!」
「雑魚専の宮園が口羽から打ったぞ!」

打った本人の宮園は淡々とダイヤモンドを回る。その背中を見て、ベンチでスコアをつけている京子は小さくガッツポーズした。

(光君がこげに打つようになったん、間違いなくあたしのおかげやけんな!)

京子の脳裏には、ふゆの間宮園に付き合ったシャトル打ちの光景がよぎっていた。

(……まさか入るとは思わなかったな)

ホームベースを踏みしめながら、宮園は内心でつぶやいた。

(……そんだけ、俺上手くなったって事か!)

宮園は、端正な顔をニンマリと歪めて、次打者の美濃部と強くハイタッチを交わした。

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