憎悪との対峙
30 母としての愛情
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間、全くの別人であることを悟った。
「ハープ・ノート。お前に構ってる暇はない」
「!?」
ホラー映画の怪物のような不気味な声。
スターダスト=彩斗の正体を隠すため、そして敵に恐怖を与えるためのドスの利いた裏声だった。
その声を聞き終えた瞬間、糸が切れたようにハープ・ノートは意識を失った。
スターダストはそれを確認すると再び階段の方に進もうとしたが、足を止めた。
「......僕もとことんお人好しだ」
普段の声でそう呟くとハープ・ノートに駆け寄り、トランサーからリカバリーのカードを倒れているハープ・ノートに握らせた。
そして再び走り始めた。
スターダスト=彩斗も自分の青さに苛立った。
非常になりきれない。
既に何人も殺した殺人鬼が自分の邪魔をした相手に慈悲を掛ける。
それ以前に自分の好きなアイドルと妹を救おうとするという時点で不思議な話だ。
ミヤのかたきを討つために無慈悲に40人近い少年たちを殺害し、それによって利益の下がった武器商の怒りを買い、襲ってきた数人を殺害した血も涙も無い人間のはずだった。
だがこのハープ・ノートへの慈悲は、それまでの経験から、もう人を殺さないと内心決めていたからだ。
怨恨による殺人は気が晴れるのは一時的なものだ。
後に残る辛い感情とは比べ物にならない。
ただ殺してしまうというのは自分の手で憎む対象を消してしまう。
激しい怒りをぶつけられず一生気が晴れない。
殺したことには何ら後悔は無い、むしろ当然のように思っているがどうしようもない感情をぶつけられなくなってしまったことを後悔している。
それこそが殺人だった。
誰かを恨み続ける事が出来るから、殺したい程に憎い相手がいても生きていけるのだ。
憎しみであってもそれは希望や願望と同じ、生きるための目的意識、動力源に他ならない。
「...」
スターダストはため息をつくと再び走り出した。
メリーを救おう、スズカを救おうなどと考えられる立場でない事は理解している。
まして自分のせいだったミヤの大怪我に対して、復讐で償ったつもりになっているなど思い上がりだと。
だがそれは純粋に助けたい、償いたいという切実な思いからの行動だった。
そう思いながらグングニルを拾い上げ、再び照準を定め、トリガーを引いた。
独特の発射音と共にワイヤーが射出され、地上1階の手すりに引っ掛かった。
「...ハッ!」
グングニルからフックを引っ張ってユーティリティベルトに引っ掛けると、一気にワイヤーが回収され、スターダストの体は螺旋階段の中央の空間を登っていく。
「いた!!ロックマンだ!!!」
「オリャぁ!!!」
「ヤァァ!!!」
階段を下っている最中のジャミンガーからの攻撃を交わし、首筋に蹴りを入れる。
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