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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第九一幕 「予感」
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して連れ出すなんてさ。補助生としての仕事はどうしたの?」
「佐藤に押し受けてきた。やけにあっさり引き受けてくれたよ」
(本当かな・・・実は脅したんじゃないのか?)
「脅さねえよ!小声で兄の品位を貶めるな!!」

いくら佐藤さんが優等生とはいえ兄の我儘にそこまで付き合ってくれるだろうか、と言う疑問はぬぐえなかったが、実際には佐藤さんはジョウの言う通り快諾している。理由は単純に明日来るであろう「試練」に備えて2人にも何かしらの準備をしていて欲しかったのだが、事情を知らないユウは「本当にいい人だな・・・」程度の感想しか抱かなかった。

「・・・まぁ、合宿だしな。夜の組手もあんまり頻繁にやれるものじゃない、こういう機会にやっておいた方が経験を積めるだろ?」
「散々付き合わされたせいでこの暗闇でも兄さんの位置が分かるほどになったよ・・・」
「・・・なぁ、ユウ」

ふと、ジョウが振り向く。かすかな光さえ逆光になるこの角度では顔色は窺えないが、雰囲気や声色で真面目な顔をしていることを察する。ジョウはしばしの無言の後、告げる。

「お前さ・・・さっき首絞められた時、ギブアップしたろ?」
「まぁ・・・あれだけ完璧にきめられちゃ抵抗も無駄だしね。そりゃ悔しいけど・・・」
「―――決めてきたやつが見ず知らずの人間でもギブアップしたか?お前、俺が相手だから手加減してくれてるからって心の何処かで油断してんじゃないのか?」
「兄さん・・・?」

唐突な問いかけ。ユウはこの普段と違う兄の言動に更に戸惑いを深めた。その態度から読み取れる感情は、焦り?普段本気の感情と言うのをそれほど見せないだけに、自らの気も引き締まる。何より、言っていることは至極まっとうだった。

つまり、こう言いたいわけだ。お前が未知の敵に同じような技をきめられた時に、お前はもうあがいても無理だからと抵抗を諦めて死を受け入れる気なのかと。すんでの所で手加減してくれる甘い敵を頭の中で想定していないか、と。
その言葉は完全には否定できない。何せ、ユウは本気の殺し合いなど一度もしたことが無い。故に、人間相手に本気で狙われる覚悟があるのかを問われたのだ、とユウは解釈した。だが―――

「馬鹿にしないでよね。今まで2回もアンノウンに殺されかけたんだ。命を懸ける覚悟くらい出来てるし、何より―――本気の勝負なら絶対に諦めてやるもんか」
「俺との組手では諦めたのにか?」
「目の前の勝負に勝つことだけが戦いとは違うでしょ?無茶ばかりしてがむしゃらに勝利にしがみつくのは、今じゃないよ」

きっぱりと言い放った。ユウは勝利を渇望する人間だが、それは目の前に映るすべてに屈服すまいと噛みつく野良犬とは違う。命の賭け時、勝負時くらいは選ぶべきだ。でなければそれは、周囲に目が行っていないだけの愚か
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