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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第九一幕 「予感」
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盛り上がり、皆は明日に訪れるIS訓練の事も忘れて大いにはしゃいだ。その中に数名、迫りくる”敵”の気配を漠然と感じて警戒する者を交えつつも。
= = =
教務補助生には、この合宿内でも教師からいくつかの役割を与えられている。消灯後の見回りや、行き過ぎた遊びをする生徒の注意、その生徒の担任への報告。他にも海岸に生徒が抜け出していないかのチェックや逃走する生徒の取り押さえなどの権限も与えられている。
逆を言えば、この権限を利用して出来ることもある。例えば―――取り締まり名目で海岸まで行き、組手するとか。
寄せては返す波音だけが響く暗闇の中に無言でにらみ合う二人の男、ユウとジョウ兄弟。汚れてもいいようにISスーツを纏っているが、月明かりだけが頼りになる暗さの中で組手をするというのは非常に難易度が高い。この旅館周辺には建物や街灯の類が極端に少ないため、ハッキリ言って明かりはほぼ存在しないに等しいのだ。余程目を凝らして何とか足元が見える程度の明かりしかないにも拘らず、2者の心に戸惑いはない。
今までに培ってきた鋭敏な五感と気配察知能力があれば、その程度は問題が無い。格闘家というのはそんな生き物だ。本業ではないとはいえ2人も格闘家のはしくれ、この程度で根を上げるほど軟ではない。
「・・・・・・」
「・・・!」
試合の開始に合図はない。声を出さずに息を吐き出し、砂上を走る。砂の足場は滑りやすいため足を踏み込むのではなくつま先で蹴るように、接地面の角度を間違えぬよう調整しながら相手―――兄の正面に走りこむ。
ただ愚直に進むのでは芸が無いので重心移動で次々に向かう方向をずらす。右、左、左、小刻みに重心移動方向の分岐に則ってフェイントを仕掛ける―――と見せかけて、もう一つ。絶好の間合いの直前に足首を使って砂の塊をジョウの顔に向かって跳ね上げる。
ジョウはこれを予測していたのか、顔色一つ変えずに音もなく移動、バランスを乱さず後ろに下がって砂を回避した。構わず脇を閉めて、握りこんだ拳に力を込める。
「でぇいッ!!」
「ふーむ・・・」
左から振りかぶるように横腹を狙うブローを放つが、これもまた重心移動と体位をずらすだけで躱される。勢いを殺さぬまま体を右回転させ、左足の踵でさらに追撃。今度は左手の甲であっさり蹴りの軌道をずらされた。簡単に弾かれるほど軽い一撃ではないはずだが、撃ち込んだ場所と角度が絶妙なため、最低限の運動エネルギーで逸らされた。その技量に今更舌を巻くほど短い付き合いではないが。
「そらっ!」
そして、目にも止まらない速さで振り上げたユウの足の、膝の部分を掌で瞬間的に押される。ただ押すのではなく、それは密着状態から繰り出される掌底のような勢いを持ったもので、まるで竹とんぼが回転を失うよう
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