第二章
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
ことも嫌だった。正直どうするべきか悩んでいた。とにかく切りたくはない、しかしそれだと文哉がまた駄々をこねる。恵理子にしても難しいところだった。さながらやんちゃな子供を持つ若い母親といったところだ。
しかし母親は決断を下すものだ。今の彼女もそうだ。そうして下した決断は。実はまだなかった。
「どうしようかしら」
学校の帰りに街を歩きながらあれこれ考えるのだった。
「切りたくはないけれど。それでも」
切らないと、だった。そのどちらにするかで悩んでいた。しかも悩んでも答えは出ない。彼女にとっては非常に苦しい話であった。
悩んで街を歩き続ける。ショーウィンドゥーも目には入らない。考えるだけだ。だがふと擦れ違った女の子に目をやった。それがターニングポイントだった。
「あっ・・・・・・」
その女の子を見て思った。これだ。これで解決する、そう確信したのだ。
「そうよ、これよ」
その街中で立ち止まって手を打つ。
「それでいいんだわ、別にこうしても」
表情も一気に明るくなる。解決するのは簡単だった。後はそれを実行に移るだけだ。
「よしっ」
満面の笑顔で自分の家に戻る。そうして少し用意をして終わりだ。それで充分であった。
次の日学校に向かう。キャンバスの中で彼女を見た文哉は。
「あっ、切ってくれたんだ」
「そう思う?」
ところが恵理子はその彼に対して悪戯っぽく笑うのであった。
「本当に」
「あれ、だって」
見れば髪が短い。それが何よりの証拠に見える。少なくとも文哉にとってはそうであった。ところが恵理子は悪戯っぽい笑みをそのままにしているのだった。
「実際に短いし」
「短くはしたわ」
こう答えはする。
「けれどね」
「?何が言いたいの?」
いい加減話がわからず首を傾げる文哉だった。
「恵理子ちゃん本当に髪切ってるじゃない」
「切ったと思うの?だから」
また言うのだった。
「本当に。それはどうなの?」
「だって切ってないと」
どうしても話がわからない文哉だった。首を右に左に傾げている。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ