第一章
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そうかしら」
そう言われると悪い気はしない。実のところ恵理子も人がいいのだ。いいことを言われるとついつい乗り気になってしまう娘なのである。
「そうだよ。だから黒いストッキングも似合うと思うんだ」
「確かに」
今の自分の足を見てから答える。見てみれば自分でも結構奇麗だと思える足だ。それを見て彼女自身乗り気にもなるのだった。
「それじゃあ。明日はそれね」
「うん。真美子ちゃん何でも似合うから」
好きだという。そう語るその顔が実に無邪気で子供っぽい。同じ歳の大学生には思えない時がある。恵理子も彼のそんな子供っぽさが好きだったりする。
「御願いね。本当に」
「わかってるわよ。絶対に着てくるから」
「うん。じゃあさ」
ここでやっと大学生らしい話になるのだった。
「授業に行こう」
「ええ。今日は確か」
「太宰の話だよ」
二人は同じ文学部だ。それが縁で知り合った仲なのだ。今ではそうしたはじめての縁なぞ全く考えられない付き合いになってしまっているが。
そんな二人だがそれでも仲良く付き合っていた。恵理子にメロメロといった感じの文哉だが恵理子もそんなふうに見られて悪い気はしない。そうした二人であった。
「確かね」
「そう、太宰なの」
「出るよね」
実は授業は真面目に出る主義の文哉であった。
「どうするの?」
「出るわ」
にこりと笑って文哉に答える恵理子であった。
「じゃあ行きましょう」
「うん」
真美子のその奇麗な素足を見ながら答える。そうして彼女にくっついて授業に向かうのであった。とにかくエリこなしでは考えられない文哉でそんな文哉を何だかんだで笑顔で受け入れている恵理子、そんな二人であった。
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