秋山 駿
第一章 崩壊する生活
第二話 消えた少女と東城会
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客や夜のお仕事関係の客層が多いせいか、夜に訪れる客にいい思い出がない。
階段を上りきり、事務所前の灰皿に煙草を押し付けひと呼吸置いてから扉を開ける。
「ただいまー」
簡素な扉を開けると、花ちゃんと1人の男がそこにいた。
「あっ!!社長遅いですよ!!」
「遅いですよって、韓来の弁当って重いんだよ?花ちゃん」
「何度携帯に電話したのかと思ってるんですか?!」
説教に近い口調でまくし立てるのを落ち着かせるように、持っていた弁当を花ちゃんに渡しデスクの定位置に半ば強引に座らせる。
その足で再び男の前に立ち、ソファーへと誘導した。
無精髭が目立ち、オールバックのセミロングという髪型に怖い雰囲気の男。
いかにも極道風の人間だが、秋山はわかっていた。
この男が、一体誰なのかを。
「ようこそ、スカイファイナンスへ。堂島大吾さん」
関東最大の極道組織・東城会。
そのトップに立つ男が、この堂島大吾である。
だが長くトップに君臨するこの男が、金の融資を求めてくるのだろうか?
「堂島さん、何故このスカイファイナンスにいらしたのですか?」
素朴な疑問を投げかけるが、大吾は首を横に振りその質問を否定する。
「スカイファイナンスに、ではありません。秋山さんに、お話がありまして」
「お、俺に?」
極道とは関係ない一般人、いわば堅気である秋山に話があると言う。
何とか平常心を保とうと思考を巡らせれば巡らせる程、その言葉の真意が汲み取れなかった。
「はい。堅気でありながら東城会を知る秋山さんに、是非協力していただきたいんです」
「ということは、やはり東城会に関係する話ですか」
「そういうことになります」
「だとしたら、少し待ってください」
1度会話を止めて立ち上がると、デスクで心配そうに見ていた花ちゃんに近寄る。
その手には、湯気が立ちのぼる温かいお茶が2人分乗せられたトレイが握られていた。
不安気な気持ちを払拭させようと、そっと肩に触れる。
「あ、秋山さん……」
「花ちゃん、悪いけど今日は帰っていいよ。後は俺に任せて」
何かを察したのか花ちゃんは静かに頷き、トレイを秋山に手渡す。
焼肉弁当の入った袋を勿論忘れる事なく持つと、一礼してそのまま事務所を後にした。
瞬間静かになった空間、そんな中で椅子に腰掛けた秋山はトレイに乗せられたお茶をテーブルの上に並べる。
「うち、あんまいいのないっすけど。こんなので良ければ、どうぞ」
「そんな、お構いなく」
とは言ったものの出された物に手をつけないのも悪いと気が引けたのか、少し躊躇いながらもひと口手をつけ
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