第十五話 両立
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ないよ。主役の座はキッチリ、競争で勝ち取ってもらわないと。私から与える事はないから。余計な心配は無用だよ」
紗理奈は紗理奈で、これは勝手に台本のモデルにしておきながらも、結構辛辣だった。こういう風に言われると、「は?俺が主役じゃないの?」と思ってしまうのが権城だった。
「とにかく、色んな役になる事を想定してホンを読んどくように!それじゃ発声練習行くよ!」
「「「ハイ!」」」
一同は屋上へと駆け出した。
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ブン!
ブン!
夜の中庭では、風を切る音が聞こえてくる。
毎日毎日この音は聞こえていて、南十字学園の寮生の中では少し話題になっている。
権城の毎日の素振りは、一時間以上に及ぶ。
「励んでるね」
「あ、キャプテン」
権城の所に紗理奈がやってきた。
紗理奈も都内出身の寮生である。
「明日から野球部の練習に復帰して良いよ。監督もそう言ったし」
「思ったより早かったっすね。雅の奴、結構重症だったんでしょ?」
「まぁ、君にも早く帰って来てもらわないと困るし、あの人も困った人だったのは確かだから。情状酌量って所かな」
話しながらでも、権城はバットを振り続ける。
紗理奈は近くのベンチに腰掛け、その様子を見つめる。
「よく頑張るんだな、君は」
「まぁ、好きな事ですからね」
「だとしても、中々できる事じゃないよ」
「キャプテンこそ、何で部長とキャプテン掛け持ちなんてしてられるんですか?」
「……両方好きだからかな」
「じゃ、俺と同じじゃないっすか」
2人は声を上げて笑った。
「野球部でも期待株、演劇部でも主役候補」
「後半には自信はありませんけど」
「いーや、君ならできる。両立期待してるよ。」
「キャプテンじゃあるまいし」
「私にできるから、君にだってできるんだよ」
「それは無茶苦茶な理屈ですよ」
権城のバットが空を切り裂き続ける。
夏の夜空がその上には広がっていた。
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