第三章
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ここでデービスの目が光った、そしてホーナーとの打ち合わせを思い出したのだった。
デービスは彼にだ、こう言ったのだ。
「あいつは左に動いてな」
「その時にだね」
「左手を顔の前に出したらな」
「その時にだね」
「フックを出すんだよ」
「それが彼の癖だね」
「そしてそのフックをな」
デービスはホーナーに確かな声で話す。
「渾身のそれこそ全力のフックだけれどな」
「かわしてだね」
「そのフックがとにかく大きいんだよ」
「大きいだけにかわしたら」
「隙が出来るからな」
だからだというのだ。
「そこで一気に攻めるさ」
「それが彼の癖で」
「弱点だからな、そこを突いてやるさ」
こう話したのだ、だがこれまでジョーンズは左に動くことはあってもだ。
左手を顔の前に出すことはなかった、一度も。
しかしここでだった、遂に。
顔の前にだ、左手をやってきた。デービスはそれを見て来た、と思った。だが顔には出さず相手には読ませなかった。
そしてだ、その渾身のフックをだった。
防がなかった、かわした。そうして。
身体をのけぞらせて顎へのフックをかわしてだ、すぐにだった。
身体を前に戻してその動きでだ、ストレートを続けて出して。
ジョーンズの顔を二回も三回も打った、すると。
それが決め手になった、それで。
ジョーンズは倒れた、そのうえで。
カウントが数えられてだ、その間デービスはジョーンズを見ていた。彼はノックアウトされ起き上がらなかった。
それでだ、遂にだった。
テンカウントとなった、これで勝負は決まった。その右手がレフェリーの手によって高らかに上げられて。
観客達の歓声がデービスを覆った、彼はこの時勝利の喜びの中にいた。しかし。
ジョーンズは起き上がらない、それでだった。
彼はレフェリーにだ、こう言った。
「おい、あいつだけれどな」
「起きないね」
「気を失ってるのかよ」
「そうみたいだね、ここは」
すぐにだ、レフェリーは医師を呼んだ。そうして。
医師がジョーンズの目を開き息を確かめる、そのうえでこう言った。
「息はしているが」
「意識を失っているのか」
「これはまずいかも知れない」
医師は強張った顔でレフェリーに答えた。
「すぐに担架で運ぼう」
「おい、まさか」
デービスもだ、彼等の話を聞いて驚いた顔で言った。
「ジョーンズは」
「大丈夫だ」
心配する彼を安心させようとだ、医師は彼にこう言った。
「君が心配することじゃない」
「しかしな」
「大丈夫だと言った」
またこう言った医師だった。
「後は私に任せてくれ、少なくとも命に別状はない」
「まずくてもか」
「そうだ、それでもだ」
命に影響はしないことは確かだという
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