第一章
[2]次話
強さのみを
ボビー=ホープはカルフォルニアで名うての賞金稼ぎだ。その早撃ちと狙いの正確さはガンマンが揃っている西部でも一番だと言われている。
その彼が木造の荒っぽい造りのバーのカウンターでバーボンを飲んでいる時にだ、バーのマスターが彼にこんなことを尋ねた。
「一つ聞いていいかい?」
「何だ?」
「あんた賞金稼ぎだがね」
「それがどうかしたのか」
「その前は何をやってたんだい?」
「カウボーイをやっていた」
それをしていたというのだ。
「昔はな」
「そうだったのか」
「その頃から銃を使っていた」
「カウボーイも色々あるからね」
「それでだ」
「それで?」
「その時にワイアット=アープを見てな」
西部のヒーローの一人をというのだ。
「凄いって思ってな」
「賞金稼ぎになったんだな」
「保安官になろうとも思ったんだがな」
そのワイアット=アープの様にだ。
「それでもな」
「それにはなれなかったんだな」
「ああ、俺よりもっと凄い奴がいた」
「それは誰だよ」
「ジャック=ランスって奴だよ」
その彼がいたからだというのだ。
「町の保安官にはなれなくてな」
「賞金稼ぎになったんだな」
「カウボーイに戻ってもよかったがな」
その道もあるにはあったというのだ。
「それでもな」
「それだとアープにはなれないからか」
「俺は賞金稼ぎになった」
「成程な」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「どれだけ射撃の腕を磨いてもな」
それでもとだ、ホープはバーボンを飲みつつマスターに話す。
「まだまだだな」
「アープには及ばないか」
「ああ」
自分でもこう言うホープだった。
「あの人はこんなものじゃないさ」
「百発百中でな」
その銃の腕がだ。
「抜くのだってな」
「稲妻みたいだろ」
「俺も一回見たよ」
マスターも言う。
「アープの銃をな」
「この町にも来たことがあるらしいな」
「かなり距離があったがね、的の空き缶を正確にだよ」
「ホルスターからとんでもない速さで抜いてな」
「ああ、射抜いたよ」
その空き缶をだというのだ。
「凄かったさ」
「そうだよな、俺なんてな」
「そのホープにはか」
「足元にも及ばないさ」
こう言うのだった。
「とても」
「そうか、けれどだよな」
「ああ、何時かな」
燃える目での言葉だった。
「あの人を越えるさ」
「凄い目標だな」
「そうだな、OK牧場の決闘とかな」
ワープの名を西部に知らしめた決闘だ。ならず者達と決闘し勝利を収めた伝説とも言える勝負である。
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