第四章
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「タイプが違ってきたんだよ」
「人間のそれがですね」
「そう、違ってきてるんだよ」
「器が小さくなったんでしょうか」
「小さくなったんじゃなくて」
どうかというと。
「タイプだね、まとまったんだね」
「まとまったんですか」
「勝新は荒削りだったよ」
それは演技を見てもわかる、束縛されない天性のものがだ。それが勝新太郎の魅力であったと言えよう。
「雷蔵は整ってて」
「そして芯があって」
「その両極端じゃなくて」
荒削りと調和、それではなくというのだ。
「整理整頓したんだよ」
「今の人はですか」
「そう、昭和のその頃から随分と変わって」
「時代も落ち着いて」
「もう昭和じゃないからね」
平成だ、昭和でなくなって随分と経つ。
「平成になって長いだろ」
「その間に人間がまとまったんですね」
「今の気配りは誰にもさりげなく、かな」
小野田さんは今の僕達の間の気配りをこう表現した。
「それかな」
「まあこうしたとかそれみよがしはないですね」
「しかも皆勝新や雷蔵みたいにお金ないから」
このことについても言う小野田さんだった。
「いや、これが一番大事かな」
「そうですね、お金がないと」
「飲みに連れて行ったりサービスするのもね」
雷蔵にしろ勝新にしろ、だ。
「出来ないからね」
「そこですか」
「そう、何といってもね」
「お金が一番大事ですね」
「そうなるかな、気配りにも」
「何かそう言うと急に話がシビアになりましたね」
「世の中何でもシビアだよ」
小野田さんは烏賊の足を美味しそうに食べながら述べた。
「わし等だってお金あったら違う場所で飲むだろ」
「そうですね、確かに」
「そういうものだよ、結局は」
「お金ですか」
「世の中お金だよ、気配りについてもね」
「行き着くところはそれですね」
「そうだよ、じゃあ金のない者同士な」
勝新や雷蔵と違ってだ、このことは僕も痛感する。
「このしけた店で楽しむか」
「そうしますか」
「しけただけ余計だよ」
カウンターから親父さんのこの言葉が来た、僕達は親父さんのその言葉に苦笑いになった、そのうえで二人でそのそれぞれ異なった気配りをしていた映画俳優達の話を続けたのだった。
気配りの人 完
2014・4・17
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